あとがき

77 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/05(木) 21:54:17 ID:8CEvcfDc0
11.あとがき

ここに於いて作者が登場する。彼の気は狂っていなかった。ただ、気が狂うことに憧れるだけの凡人だった。

彼はこの小説の前身にあたる作品において私小説としての自分をようやく埋葬した。
しかし棺桶の中で、彼は唐突に自分以外のキャラクタの埋葬をしていなかったことに気付いた。

長年連れ添った彼らを埋葬せずに終わらせてしまうのはひどく無礼だ。
そう思った彼はノソノソと棺桶の蓋を開けて起き上がり、この小説を書くことに決めた。
なのでこの小説はメタフィクションかつキャラクタ小説であることが必定であった。

ところでメアリー・スーという定義が存在する。
本来の意味に於いてメアリー・スーは二次創作に登場する、原作のキャラクタより優秀なオリジナルキャラクタを指す。
しかし、当該作品の世界観を破壊してしまう存在をメアリー・スーとする、広義な捉え方もある。

メアリー・スーはその名が示唆する通り、海外の創作コミュニティにおいて誕生した言葉である。
大抵の場合メアリー・スーは作者の願望の具現化であり、その独善ぶりのあまりに受け手に嫌われる。
何よりも嫌われるのが作者本人の登場である。これは最早、願望を虚飾しようという試みすらも見られない。

小説の最後の最後に登場した彼は正真正銘、最も嫌われる類いのメアリー・スーである。

ただ一つ訂正しておくと、メアリー・スーは女性の名前である。
この作者は男性なので、マーティー・ストゥーだとかゲイリー・スーと呼ぶのが正しい。
ただし、日本では男女問わずメアリー・スーとされる場合が殆どである。

いずれにせよメアリー・スーを自覚するこの人物は早々に退場しなければならないが、
残念ながらこの章も他の十章と同様に6レスという制約に引っかかっている。
つまり、泣こうが喚こうがあと5レス、作者はこの章の主人公として勝手気ままに躍動するわけである。

なお、この章には顔文字が登場しない。一切が地の文である。
そういった自分語りに興味がなく、また嫌悪感すら覚える読者諸賢には早々にこのページを閉じることを進言する。
彼とて、見たくもない二次創作に突き当たった場合は一刻も早くページを閉じるようにしているのだから。

78 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/05(木) 21:58:27 ID:8CEvcfDc0
さて、作者が登場してまず最初に行わなければならないのは、
他ならぬ自分こそが作者であるという自己証明だった。

この世には信頼できない語り手という存在が蔓延ってしまっている。
作者があくまでも作者当人であり、作者が作り出したキャラクタでないということを、
彼は冒頭に証明してしまう必要があった。それは、彼の承認欲求に大きく影響するからだ。

そこで作者はzip形式に圧縮したファイルをアップロードすることにした。
アップローダーはブーン系に関係すると思われる方が作ったものである。ここに、勝手に感謝の念を述べる。
以下にそのファイルへアクセスするためのアドレスを記載する。

http://u3.getuploader.com/boonnews/result/54d35fe7-a57c-425a-a9ec-1774b63022d0

このファイルは決してウイルスではない。しかし、見たくもないものという意味においてはウイルスにも近しい。
ファイルには作者が今までに書いたブーン系小説の破片が雑然と詰め込まれている。
それは、作者の個人的なOnedriveに残っていたブーン系関連のファイルを出来る限り抽出したものだ。

個人的なOnedriveにアクセスする権限を持つのは作者だけであり、
また、パスワードも作者しか知らない。この証拠は何よりも作者を証明する手立てになると確信している。

中には完結させた作品の本文は勿論、誰にも見せていないキャラクタの設定や没ネタ、没小説、
及び逃亡した作品の破片、また自身にも意味の分からないことを書き殴っているファイルなどが含まれる。
一部htmlファイル等を含むものの概ねtxt形式である。それでも容量は解凍前の段階で1.74MBに達している。

79 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/05(木) 22:02:59 ID:8CEvcfDc0
おっと失礼……アドレスが間違っていたらしい。

http://u3.getuploader.com/boonnews/download/69/%E3%83%96%E3%83%BC%E3%83%B3%E7%B3%BB%E3%81%AE%E5%90%8D%E6%AE%8B.zip

これでどうだろうか。

このファイルのアップロードには作者の証明という目的もあるが、
わざわざこの場に作者が登場した、もう一つの大きな理由も含まれている。

ここに格納されたtxtファイルは、正真正銘作者の手元に残っているブーン系関連のテキストの全てである。
そしてこのファイルのアップロードと同時に、作者はOnedriveから該当するファイルを削除した。

言ってみればこれは作者自身のブーン系における風呂敷を畳むための作業であり、
キャラクタ埋葬の暁にはどうしても経ねばならなかった手続きであったのだ。

この小説はブーン系における初期衝動や原点回帰といった意志を含んで書いたものである。
その試みは八割方失敗している……合理性や奔放さといった観点において、
作者は自らの初期衝動や原点を見出すことが出来ずじまいだった。

と、言うよりそもそもそういった試みに成功していたならばこんな陰険な具合で作者が登場する筋にもならず、
作品は見事なグランドフィナーレを描いて幕引きとなっていただろう。
大抵の場合、作品が終わった後に披露される作者の言動などは碌なものではないのだ。

いずれにせよ、作者は自らの原点に回帰した上でブーン系に幕を引きたかったのだ。
そしてその意欲が不発に終わってもなお、作者は当初の予定通り事を進めなければならなかった。
言ってみればそのザマは観客のいない舞台で踊り続けるピエロである。

ピエロはやがて自爆する。彼はしっかし自殺宣言するのだが、
誰も観ていなかったせいで彼は死後に余計な嫌疑を掛けられる羽目となる。

本当なら作者は、読者のレス数を目安としてこの小説の投下頻度を調節するつもりだった。
すなわち、続きが読みたいのならばレスをしなさい、という具合である。

しかしそれが不可能だということは自明だった。理由は二つある。
一つは、その姿勢があまりにも傲慢不遜であるということ。そもそも作者自身が拡散希望を嫌う天邪鬼である。

さらにもう一つ。
書き進めていくに従って、きっとこの小説を最後まで読み通す奴はいないだろうという推測が立ったからだ。

80 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/05(木) 22:06:04 ID:8CEvcfDc0
こういった筋書きの小説を書くのは初めてではないため、どの程度反響を得られるか事前にある程度予測できる。
それによると、この小説は割れた木琴よりも響かないだろうと思われた。
理由は面倒なので省くが、恐らくここまではその予測通りの展開になっているだろう。

しかしその悲観的推測は一つの余計な希望を見出す契機を生み出してしまう。
即ち、どうせ誰も観ていないなら作者が登場しても構わないだろう、という露骨な開き直りである。

無論、作者が登場しなければこの小説は当初の思惑通り完結することが不可能だった。
よってこの場合に得られたのは喜びではなく、ある一定の安堵である。

とは言え、悪意の有無に関わらずページを開いた読者が作者の登場場面だけを目にしてしまう場合もある。
読者はある種の憐憫を作者に覚え、もしくは憎悪し、いずれ好感を持たぬままにページを閉じるだろう。
作者にとっても望まぬハプニングであるが、事ここに至ってはどうしようもない。

この小説の流れに違わず、本章も登場した人物による箸にも棒にもかからぬ自分語りによって終わろうとしている。
既に6レスの半分を過ぎたというのに、読者諸賢は未だ作者が顔を出した意味が分かっていないのではないだろうか。

或いは、これがただ単にくだくだしいだけの一般的な後書きだと思われているかも知れない。
これだけは間違わないで欲しいが、これはあくまでも小説の本文の一部である。
もっとも、作者が登場するという最悪の展開を詳らかにする必要もないのだが。

しかし彼にはどうしても言いたいことがあった。
そのために彼はこうやって、作者の弁舌が不評を買うと理解していながら、本文に登場したのだった。

彼は気が狂っているわけではない。しかし気が狂うことに憧れる凡人である。
その一方で、彼は正気を保っていたいとも考えている、やっぱりどうみても只の凡人なのである。

81 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/05(木) 22:10:44 ID:8CEvcfDc0
ここまで読み通した読者がどれだけいるか分からない。二桁どころか。五指すら埋まらぬやもしれない。
しかしこの小説が観測される未来を信じ、作者は以下の如く提言する。

読者諸賢においては、頭の中にある全ての物語を上から順番に並べていただきたい。
この場合の『物語』は虚構だけを指すものではない。貴方の恋人や家族、友人や知人、
F2Pソーシャルゲームや職場での失敗など、今の貴方の人生に関わる全ての要因を物語に見立てていただきたいのだ。

作者の過去作をしっているならばそれも含めて考えてほしい。
きっとそれは途方もない数にのぼるだろう。なんなら上から十番目まででも構わない。

さて、貴方は今この小説を読んでいる。ここに、もう一つ新たな物語が誕生しようとしている。
そこで問いたい。この小説は、物語は、貴方の頭の中で何番目なのだろうか……?

出会いの新鮮さを加味すれば二桁の内に入るだろうか。二十番目以内には?
五十番目? ギリギリ三桁の内にはランクインするか?
或いは……幾星霜の様々なつまらない物語の海に沈んでしまうだろうか。

そこで貴方が出した答えには、作者が本文で述べたあらゆる要素、
そしてまた作者自身の充足度に直結する数字が含まれている。

いや、本当なら作者が今までに披露してきた全ての物語に対して、彼はこの問いを呈するべきだったのだ。
それは今まで言えずにいた。何故なら、読者との間で密に交わした暗黙の了解に縛られていたから。
今や墓場に至って、死者を縛るものなど何もない。もはや、何者も彼を縛ることはできない。

もっとも死者である彼は、その回答を聴くこともできないのだが……。

82 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/05(木) 22:14:17 ID:8CEvcfDc0
この書き込みが本当の、この小説の終わりである。
最後に、小説の作者らしいことを述べて幕引きしてしまうとしよう。

作中、ブーンは風呂敷を投げてしまうことによって自らの旅路にケリを付けた。
ではその風呂敷はどこへ向かって飛んでいったのか……? 

勿論、次の小説に向かって、である。

彼は旅路の最後で墓場に辿り着き、そこで本小説での役割を終えた。
しかし彼はスターシステムを採用している作品群のキャラクタである。
一度役割を終えれば、また別の作品の登場人物として生まれ変わる宿痾を抱えているのだ。

次の物語で彼は、文字通りの生まれ変わりを指し示すが如く赤子として登場する。
帝王切開によって取り上げられた彼は健康体の男児そのものだった。
だが、新しい命と引き換えに母親は亡くなってしまった……生命の循環には付きものの悲劇である。

だが、悲劇は一つでは終わらなかった。生まれて間もないブーンは、何者かが放ったピストルの銃弾により絶命する。
場所は彼を引き取った父親が住まうアパートの一室。当時父親は外出中だった。
部屋に押し入った上、金品には手を付けられずに起こった犯行であった。

捜査は難航する。しかし、徐々に父親が殺害したとの強くなっていく。
勿論父親は否認。また凶器の在処も分からず、警察も逮捕には尻込みしている。

それとは別に、捜査線上には解明不可能な手がかりが浮かび上がっていた。
それは、血に濡れたダイイングメッセージである……しかし被害者は新生児。
ならばそれを書いたのは犯人なのだろうか? そうだとして、わざわざ赤ん坊に書かせる意味とは?

そして、そのメッセージの内容は……無論、そこから先を思い描くのは読者の自由意思である。
この物語は貴方が働かせた想像力の結論こそが正答なのである。

貴方に、誰にも正解と認められない物語を完成させようという意欲があれば、の話だが。








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