枯渇した部室を見る彷徨えぬ亡霊

49 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/03(火) 21:42:44 ID:rlbuCcLw0
7.枯渇した部室を見る彷徨えぬ亡霊

ζ(゚ー゚*ζ「ようこそ、『コン部』へ」

彼女は若々しい声で僕に向かってそう言った。そして、それ以上何も喋らなかった。
彼女は大学構内の部室と思われる場所に座っている。
その向かい側で、やや齢を重ねているように見える男がノートパソコンに何やら打ち込んでいる。

ζ(゚ー゚*ζ「ようこそ、『コン部』へ」

彼女はまた繰り返した。さっきと全く同じ口調、音階であるように思えた。

( ^ω^)「……コン部?」

ζ(゚ー゚*ζ「ようこそ、『コン部』へ」

( ^ω^)「コン部って何なんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「ようこそ、『コン部』へ」

( ^ω^)「……」

( ФωФ)「彼女はもう自我を持っていない」

不意に向かいに座っていた男が口を開いた。

( ФωФ)「長くこの部室に閉じ込められていた彼女は次第に精神を崩壊させていった。
        自分が所詮キャラクターであるという事実を許容できなかったのだ。
        やがて崩壊した彼女は、まるでゲームキャラクターのようになってしまった。

        ゲームのキャラクターに自我は存在しない。与えられた台詞を繰り返すのみ。
        それが今となっては、彼女に出来る唯一にして最後の役割なのだ……」

( ^ω^)「そんな……本当なのかお」

( ФωФ)「残念ながら、本当だ」

ζ(゚ー゚*ζ「うそです」

( ^ω^)「……」

( ФωФ)「……・」

50 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/03(火) 21:47:18 ID:rlbuCcLw0
( ФωФ)「良い感じで乗ってやったのにどうして貴様は自分からぶち壊しにかかるのだ」

ζ(゚ー゚*ζ「ロマの設定が思いのほか面白くなかったのが悪い」

( ФωФ)「だったらもう少し打ち合わせの時間をだな」

( ^ω^)「あの……」

( ФωФ)「ご安心召されよ客人、吾輩たちは決して怪しいものではない」

ζ(゚ー゚*ζ「……そんなキャラだっけ」

( ФωФ)「忘れてるに決まってますやん」

ζ(゚ー゚*ζ「私も、どうしたらいいかわかんない。とりあえず殴る?」

( ФωФ)「いかん、この話は無駄なことをやっているほどゆとりが無いのだ」

ζ(゚ー゚*ζ「いっけなーい、遅刻しちゃった~! あ、私はデレ! 某大学の社会学部に通う一回生でB型!
       8月16日生まれの私が所属してる部活はコンプレックス部……通称コン部!
       あらゆるコンプレックスを持っている人が集まる部活なんだよ!

       ちなみに私はダフネコンプレックスっていうの。簡単にいうとね、処女の男性嫌悪ってやつ?
       あ、こんな説明してる場合じゃなかった! ダッシュダッシュ~!」

( ^ω^)「……」

( ФωФ)「いきなりどうした」

ζ(゚ー゚*ζ「設定をまとめた」

( ФωФ)「だったら吾輩のことも説明しておかないと都合が悪いではないか」

ζ(゚ー゚*ζ「もー、めんどくさいなあ……。
       あ、こっちはロマ。同じコン部の部員で……? 何? 消防士志望だっけ?」

( ФωФ)「作家だ。純文学作家」

ζ(゚ー゚*ζ「そう! たぶんそれ! それで五浪四留の30歳! 童貞なんだよ!
       あっ、おかあさんに童貞の意味を聞くときは、
       ヘイビッチ、ファックミーアーンドゥゲトゥアウトヒアって言えば教えてくれるよ!

       ねえ大丈夫、大丈夫? 私まで面白くなくなってない?」

( ФωФ)「問題ない。というか最初からそこまで面白くはなかった」

51 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/03(火) 21:51:14 ID:rlbuCcLw0
( ^ω^)「……まあ、何となく言いたいことは分かったお」

( ФωФ)「察しが良いな」

ζ(゚ー゚*ζ「うちの部長とは大違いだね、同じ顔ぶら下げてるのに」

( ФωФ)「いや、吾らが部長も普段は常識人だったぞ。毎月二十日を除いてな」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあこの人もしかして部長なの?」

( ФωФ)「そういうのはややこしくなるからやめたまえ。
        ……ともかく、吾輩たちはつい先日まで……いやもっとも、時間感覚は曖昧なのだが、
        コン部の部室を舞台として一種の物語を展開していた。吾輩も、デレも、その中では主たる役柄だった」

ζ(゚ー゚*ζ「まあ、実質的に私が主人公だったね」

( ФωФ)「然し、その舞台は唐突に『消失』した。
        最もそれ以前からこの部室に於けるときの流れは滞りがちだったのであるが、
        ある日に吾輩たちに突きつけられたのは完全なる消失だった。

        それゆえ、吾輩たちはまともに舞台から退場する暇も与えられず、
        結果としてこのように消失した部室の中へ永遠に閉じ込められる事になったのだ」

ζ(゚ー゚*ζ「無駄にややこしいけど、要は作者が削除依頼を出してスレごと消されたの。
       ていうかいいの? 私コン部で楽屋ネタやろうとしたとき、
       どっかの学歴厨に滅茶苦茶止められた覚えがあるんだけど」

( ФωФ)「そのとき作者が如何なるイデオロギーに刺戟されていたのか……今となっては分かることでもない。
        確かなのは作者がその時点で存在していた物語を、コン部に限らず一切合切削除したということだけだ。
        そして、作者からの次の指示を待ち侘びていたキャラクターたちは皆、行方不明と相成った」

ζ(゚ー゚*ζ「無駄にややこしいけど、要は言い訳付きの逃亡宣言みたいな」

52 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/03(火) 21:55:13 ID:rlbuCcLw0
( ФωФ)「突然に閉ざされた物語の中で、吾輩たちは彷徨う事も許されぬ亡霊となった。
        その亡霊は彷徨わぬが故に誰かに見つかる事は無かった。
        そしてまた、誰かに見つけてもらおうにも手の尽くしようが無かった」

ζ(゚ー゚*ζ「ここまでロマのめんどくさい喋りが通じてるってことは、これめんどくさいタイプの小説でしょ。ねえ」

( ФωФ)「最も、吾輩たちにも亡霊であったという自覚は殆どない。
        ついさっき君が入室してくるまで……吾輩たちの時間は止まっていた。

        然し君の入室によって、吾輩たちの時間軸も一気に2015年へ飛躍することになり、
        またしても現在進行を取ることになったのだ」

ζ(゚ー゚*ζ「めんどくさいからぷよぷよしてます!」

( ФωФ)「とは言え……君は別の物語の主人公だ。つまり、吾輩たちはスポット的な登場ということになる。
        吾輩たちの物語が本格的に再開されるということではなさそうだな」

( ^ω^)「……僕は、手紙を見てもらいに来たんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「そういえばキミはなんで風呂敷持ってるの?
       おかしくない? 今までに誰かに突っ込まれなかったの?
       別に何も包んでないし。唐草模様だよ。江戸時代の泥棒? 泥棒なの?」

( ФωФ)「……どうか寛容な精神で許してあげて欲しい。
        彼女を含めてコン部の住人は基本的に空気の読めないクズであれという役割を背負っていたのだ」

ζ(゚ー゚*ζ「何そのまるで自分はそこまでクズじゃなかったですみたいな。
       アンタだってメサイアコンプレックスの可哀想おばさんから金巻き上げてたでしょ!」

( ФωФ)「本当はあんなことやりとうなかったんじゃ」

ζ(゚ー゚*ζ「……その妙に新しいパソコンのお金の出所は?」

( ФωФ)

☆-( ゝωФ)vキャピッ

53 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/03(火) 21:59:11 ID:rlbuCcLw0
ζ(゚ー゚*ζ「というか手紙とかどうでもいいです。もし無理矢理にでも読めというなら音読します」

( ^ω^)「それは……」

( ФωФ)「余所の世界の人間を無闇矢鱈に困らせるんじゃない。
        ……ま、吾輩もその手紙の内容はおおよそ見当がついている。
        今更わざわざ見せられるものでもなかろう。

        というか、恐らく吾輩たち以外のキャラクターも察しはついているのではないだろうか。
        大なり小なり、彼らとて作者の脳味噌の一片には変わりがないのだから」

( ^ω^)「じゃあ、僕の旅は無駄なのかお?」

( ФωФ)「そうは思わぬ。何故ならば、キャラクターが察している、という事態を周知することも物語の役割だからだ。
        少なくとも吾輩たち物語の一員、そしてそれを作り出している作者にとっては決して無駄とは言えまい」

( ^ω^)「……」

( ФωФ)「そういうわけだ。故にこれ以上ここにいる由も無かろう。
        デレがまた余計なことを言って君の物語を引っかき回す前に、さっさと出て行くがよい」

( ^ω^)「……けれど、ここで僕が出て行ったらどうなるんだお? あなたたちは……」

ζ(゚ー゚*ζ「また止まるんだよ」

( ^ω^)「え?」

ζ(゚ー゚*ζ「あの時に起きたことと同じ。また私たちの時間が止まるの。それだけ。
       このまま私たちは部室に閉じ込められて、誰かに知られることもなく、自覚することもできない。
       明日も明後日もその次もその次も、いつまでも私たちは放置される……ただ、それだけだから」

( ФωФ)「それは決して珍しいことではない。今までにも多くのキャラクタがその使命を果たさず、
        理想とする終わりを迎えられずに現実世界から隔離されてしまっているのだから。
        吾輩たちは孤独の囚人である。しかし、他にも孤独の囚人がいることもまた、よく知っている。

        仮にまたこの部室が動き出せば……そのときは、その時こそはまた時間が流れ始め、
        コン部は息を吹き返し、吾輩も、デレも、本来の人格を取り戻すことになるのであろうな」

ζ(゚ー゚*ζ「ま、そんなことは99%有り得ないんだけどね」

54 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/03(火) 22:03:24 ID:rlbuCcLw0
( ∵)

( ∵)

( ∵)カタカタ

(( ∵))カタカタカタ

(((( ∵))))カタカタカタカタ

(((( ∵))))「ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、アアアアアアアアアアアア」

(((( ∵))))「世界の不在、神の不在、救済の不在、静寂の狂乱」

(((( ∵))))「雑音の消滅、思弁の消滅、空白の証明、思考実験の終焉」

(((( ∵))))「打鍵音の恐怖、第四の壁は未だ堅固、第五の壁は崩壊、実在は証明不能」

(((( ∵))))「証明は不可能。神を探求する。神を冒涜する。冒涜すべき神の不在」

(((( ∵))))「永遠の拘禁。情報の隠蔽。匿名の誹謗。信奉者としての終幕」

( ∴)クルリッ

( ∴)「即ち」

( ∴)「存在の否定」






8.認識に疲弊した猜疑心のパレード