もしも封印された初期衝動がお前に致命傷を負わせられるなら

33 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/01(日) 21:27:08 ID:BUXRE2KM0
5.もしも封印された初期衝動がお前に致命傷を負わせられるなら

「見つけたぞ!」

そんな甲高い声が背後から聞こえてきたと同時、背中に強かな衝撃が走って僕は思わず倒れ込んだ。
そのまま地面に伏せって混乱を沈めようとしているところを、馬乗りになった誰かに後頭部をボカスカ殴られる。

……ボカスカというより、ポカポカと言った方が正しいかもしれない。
その攻撃にはまるで迫力がなかった。年端もいかない子供が必死に大人に抵抗を試みるように……。

振り返り見てみると、そこで僕を齷齪叩いてるのは正真正銘の少年だった。
顔の形はさっきの男とどことなく似通っているような気がする。
最も異なっているのは年齢だった。その矮躯はおそらく十歳前後のものと思える。

(・∀ ・)「この、この! こら、この野郎!」

……幾ら児童の拳とは言えチクチクと攻撃されれば痛みも溜まる。
そこで僕は彼を傷つけないよう注意深く振り払った。彼の体は紙屑みたいに軽かった。

( ^ω^)「なんなんだお、一体……」

(・∀ ・)「とぼけるな! 俺は知ってるんだぞ、お前はもうとっくに酒とか飲める年齢になっちまってるんだろ!
     そういうお前をだな、俺は、俺はやっつけに来たんだ! どーしよーもない碌でなしめ!
     まさか俺のことを忘れただなんて言わせないからな!」

……こんな子供を裏切ってしまうのも申し訳ない話だ。
だからといって嘘をつくのも忍びない。

( ^ω^)「……ごめんだけど、君のことは覚えてない……そもそも、出会った覚えすら……」

実に歯切れの悪い調子でおずおずとそう言うと、彼はとどめとばかりに僕の太腿あたりをポカンと叩いた。

(・∀ ・)「知ってるよ!」

34 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/01(日) 21:31:10 ID:BUXRE2KM0
(・∀ ・)「はあぁあー……知ってるよ。どーせさ、知らず知らず忘れられていくんだ。
     なんかさ、しょーもないよね。今になって俺が粋がったってさ、意味ないじゃん。
     調子乗ってたみたいな感じで反省されてさ、それでもうあの頃とは違うみたいにさ、言うんじゃん。

     なんか、過去の俺は今よりダメでしたみたいにさ、普通に言うじゃん。それが合ってるみたいに。
     それ言ってれば文句ないだろみたいな感じでさ。自分の過去なら幾ら痛めつけてもいいやって思ってんじゃん。

     イジメだよね。マジで。自分で自分イジメんのはセーフみたいな。
     メンヘラみたいなこと平気で言うよね。他人がメンヘラだったらキモいって思うのに。
     でも過去の自分の手首とか傷つけてヘラヘラ顔でツイートするよね。意味わかんね」

( ^ω^)「……黒歴史、みたいな?」

(・∀ ・)「なんだよ。馬鹿な大人になったくせに察しがいいな」

( ^ω^)「いやまあ。ついさっき、同じようなことを言ってる人に会ったような気がするから……」

(・∀ ・)「俺はそいつとは別の役割を持ってるよ。だって、わざわざ別の人間として登場したんだからな!
     だから、俺が言いたいのは、そーゆー感じで昔の自分なら痛めつけても封印してもセーフみたいな、
     そういう世の中の空気が嫌いだってことなんだよ! おい、お前、ちょっと想像してみろよ。

     今の自分がどんだけ良い奴だとしても、それは過去の自分があったからだろ?
     なのになんで過去の自分を自分じゃないみたいにするの? 
     大学生が小学四年生の真似をしてもわからないものはわからないな。

     まあ別にいいんだけど。だっていろんなヤツに喧嘩売ってもめんどいだけだからね。
     でもなんかさ、そうやって小さくまとまってる感じのお前みたいにだけはマジでなりたくなかったの!
     そしてそう思ってたのは誰でもなくお前自身なの! 忘れたフリをしてんじゃないの!」

35 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/01(日) 21:35:11 ID:BUXRE2KM0
( ^ω^)「でも……でも、そんなことを僕に言われたって困るお。
      僕は作者じゃないし、作者の代替人格というわけでもない。
      ただ単純に、作者の好きなように作られた物語の登場人物に過ぎないんだお。

      批判するなら作者を批判するべきであって、僕にぶつけられても八つ当たりにしか聞こえないと言うか」

(・∀ ・)「なに? じゃあお前は作者と対等に話す方法を知ってるの? 俺知らないんだけど。あるんなら教えてくれよ。
     ないじゃん。そんなのないじゃん。俺だってなんか子供みたいな人格だけど、中身は所詮作者じゃん。
     作者が作者を批判してるだけじゃん。大人っぽい表現をするなら、それはただの自己陶酔だろ。

     だから幾ら俺がここで作者がちんちんになっちゃったって悪口言っても、作者にダメージないじゃん。
     だいたい何これ、これが作者の書きたかったことなの?
     俺、今回はゴリンゴリンのメタフィクションを書きたいって聞いたんだけど?

     ストーリーとかキャラ設定とかそういうのから出来るだけ逃げる感じの小説を書きたいって聞いたんだけど?
     意味不明な会話とかよくわかんないけどカッコイイ言葉を使って読む人を魅了したいって聞いたんだが?

     それで出来上がったのがこれ? ストーリーもキャラ設定もあるじゃん。
     どの辺の会話が意味不明なの? 結局いつも通り、作者の言いたいこと代弁させてるだけじゃん。
     それも伝わらないと意味ないから超わかりやすく書いてるじゃん。もっかい訊くけど何これ?

     ゴリンゴリンのメタフィクションとか意味わかんないけど、つーかゴリンゴリンって表現超だせーけど、
     これがそういうやつなの? なんかいつもと変わらなく見えるんですけど?
     周りにツッコまれないようビビりながら穴を塞いで回ってるようにしか見えないんだが?

     ちょっと作者ここに呼んでこいよ。別にイタくてもいいじゃん。ちょっとここに呼べよ。
     そしたら俺がめっちゃ殴ってやっから。何ちょっとイキって大人ぶった小説書いてんのって。
     なんかさ、ちょっと年季の入ったバンドの熟練の作品みたいなの気取ってるよね。クソ素人のくせに。

     いいから作者呼んで来いよ。つーかこんな文字列ブチブチ打ち込んでる暇があるんだったらこっち来いや。
     どうせこないだろうけど。そういうのイタいとか思っちゃってるお前のそのちんちん頭が痛々しいよ」

36 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/01(日) 21:39:28 ID:BUXRE2KM0
(・∀ ・)「昔のお前なら出来たよね? まだ俺たちと知り合って間もない頃のお前だったら。
     だってまだ初期衝動で突っ走れたもんね。周りの目とか気にしないで好きなことを好きなだけ書いてたよね。
     それがなんか、リアルの事情とかしらねーし心変わりとかもっとしらねーけど、書けなくなったよね。

     過去の作品引っ張ってこようか? 高校生の頃の小説が、
     未だにネットの海に漂ってるよ。そしてこれからもいつまでも漂ってんだ。

     おいお前、いや、つーかお前ら全員だよ。初期衝動が恥ずかしかったとか思ってる連中みんなだよ。
     何をどう考えてもあの頃のお前らの方が必死だったじゃん。趣味にすら必死になれないならさっさと死ねよ。
     労働を宗教か何かみたいに信じ込んでそのまま殉死すればいいじゃん。気持ちの悪い。

     あーもー趣味に没頭したいけどリアルがねーみたいなお前のその全部がリアルだからー残念ながらー。
     お前が今やってることも昔にやらかしたことも全部事実だからーどれもなかったことにはならないんでえー。
     それをさー自覚してたらさー気軽に黒歴史とか言えないよなー。

     でさーそういうヤツに限って他人が裏切ったらメチャクチャキレるよね。失望したとか言うよね。
     そんなこと言う資格ないよね。お前昔の自分自身を裏切ってるじゃん。
     あの頃にあった初期衝動とか情熱とか全部捨てて縮こまってんじゃん。

     自分自身すら裏切るヤツが他人に裏切られるのなんて当たり前じゃん。自分を振り返って反省しろよ。
     反省しても遅いけどな。だってお前もうロクなこと出来なくなってるし。
     
     出来てせいぜいが二次創作だし。
     他人を弄っておもしろがるみたいに、他人の作ったキャラクターを侮蔑するだけだし。

     国語の問題で作者の心情はいっぱい考えただろーけど、
     キャラクターの気持ちなんて考えたこともないんだろうな。キャラの人権は作者じゃなくてキャラのモノなのにな。
     そんなの、その辺のガキの人権が生みの親にないのを考えたら分かるじゃん。想像しようよ。

     なに、今俺って全方向に喧嘩売ってる? そんなの知らねーよ。
     作者が思ってもないようなことを言ってる? もっともっと知らねーよ。くそどうでもいいよ。

     俺は俺の出来る方法で作者に反抗してるだけだし。
     子供っぽいしゃべり方とかもうどうでもいいよ。キャラ設定なんて知ったこっちゃねえや。
     どうせ俺のことなんてすぐに忘れられるし、また見向きもされなくなるだけだろ」

37 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/01(日) 21:43:11 ID:BUXRE2KM0
(・∀ ・)「それにさ、俺がこんだけ無駄に文字数稼いでくっちゃべったところで、作者はちっともダメージ受けないんだぜ。
     いっつも『ちょっと今精神の調子が悪いから読みたくない』って言われる類いの小説ばっか書いてるくせに、
     当人はと言えばツライツライと悩んでるフリだけでその実なんにも傷ついてないんだもん。

     俺の一連の台詞にしたって作者の意図に仕組まれてるだけだし、
     ただ作者が憐れまれたいから、可哀想がられたいから大袈裟に書き殴ってるだけだし。
     そんなもんだよ。俺が言いたい、一番言いたい初期衝動のことなんて欠片も思い出さないんだろうな。

     十何年書いてるんだか知らねーけど、その文章は熟練の業じゃねーよ。ただ腐ってるだけだよ。
     それを自覚していながら、いや心根じゃそう思ってねーのかもしれないけど、
     いつまでもいつまでも小説を書いてるんだからまったく報われたもんじゃない。報われてたまるかよ。

     作者ばかりじゃない、ここいらの連中は元来変人が多かったもんだが、
     最近じゃあすっかり丸くなっちまってハッシュタグみたいな話しかしやがらねえ。
     どいつもこいつも腐っちまったんだ。なぁにが創作だよ。出来るもんなら創り作ってみろよ。

     今夜こそな、俺はお前……この場合のお前ってのはこの物語の主人公だが、そのお前じゃなく、
     作者の枕元に立ってやるよ。そしてそのちんちん頭を目一杯ド突き回して最低最悪の悪夢を見せてやる。
     そうしたらちっとは初期衝動を思い出すかもしれねえな。また昔みたいに走るのかもな。

     いやもうそこいらの彫刻刀でこの俺を無数に刻んで、無数の俺が無数の連中の枕元に立ってやるよ。
     そうして根っこから腐って爛れた脳髄を殴り倒してへし折ってやる。

     もしも出来なかったらどうするかって? どうにもならないよ。
     その時は俺が、所詮ちんちん頭の物語を手伝う下僕だったってだけの話さ」

38 : ◆xh7i0CWaMo :2015/02/01(日) 21:47:21 ID:BUXRE2KM0
げほごほがほ、と少年は唐突に咳き込んだ。そのまま前のめりに倒れ込もうとした彼を支えようと手を伸ばす。
しかし彼はその手を振り払ってしまった。パサリと地面にひれ伏した彼からは、矢張り重量が感じられなかった。

( ^ω^)「……具合が悪いのかお?」

(・∀ ・)「馬鹿か。俺は初期衝動という主題を役割に背負ってるんだ。
     その初期衝動がとうに死んでしまってるのに、それを象る俺が健康体なわけがないだろう。
     俺がガキの姿をしているのもそのせいだ。初期衝動は夭折したのさ。

     もう俺は喋り尽くした。もう役目は終わっちまったんだ。
     あとはこの場所で一歩も動かず倒れ伏して、その時がやってくるのを待つだけだよ。
     ああ、十分しゃべった。ガキの身体でも老衰の充足感は覚えられるもんだ」

( ^ω^)「……まだ、手紙を読んでもらってないお」

(・∀ ・)「そんなもん読まねえよ。死んでも読まねえ。ああ、絶対に。
     俺はとことん作者の意図に反抗するんだ。そういう風に仕組まれてるんだからな……。
     だからさっさとその汚らしい紙をしまい込んで先に行け。もう二度と俺の前に現れるな」

( ^ω^)「……」

(・∀ ・)「誰も……誰も想像しない世界に俺が生きていたら、すばらしいと思わないか。
     物語に描かれない。その顛末も暗示されない。何処にもない、作者や読者の頭の範疇にもない、
     そんな世界で俺たちが元気いっぱいに飛び回れたらいいと思わないか……。

     ああ、何の概念もない世界に行きたい……世界観なんて金輪際ご免だ……」






6.神経質でラジカルな『しょうせつのかきかた』概論