【感想】スピカを沈めるようです

読み終わった後、「うわーーーーー……、うわーーーーー……」語彙が消し飛んだ。
一体どこまで事前に調べ上げ、どこまで計算して動いていたのか。
あだ名、デレの名前、星を話題に出したこと、ボートに乗って指輪を処分することまで、全部津出の掌の上だったとしか思えない。

執念とは恐ろしい。察するに整形までして内藤に近づいているのだ。
それは単に内藤の好みに近づこうとしただけでなく、デレのうつし身として自分を好きになってもらおうという、狂気的な一面が見え隠れする。
同じ会社に入社して、あまつさえ同じ部署に配置されるよう仕組んで、どこまでも合法的であるのが一周周って怖い。

なぜ津出を目の敵に思ってしまうかというと、やっぱりデレがいい子すぎた。
もうこんな、どこをとっても非の打ちどころのない女の子出されちゃ、そりゃそっちに同情せざるを得ないでしょう。
うわーマジかよー……と読後頭を抱えたくなるのも仕方ねえ。
しかし津出を悪女だなんだと非難する気にもなれない。
やってることはただの恋愛の駆け引きに過ぎないんだから。

「最後に愛が勝って結ばれる、なんて素敵なハッピーエンド!」
ここまでの全てを知ってる読者からしてみれば、いかにも敵役のセリフだなという印象だけど、
終わり良ければ全て良し、その終わりまでの過程は、決して褒められたものではなかったという、己への皮肉めいたものが窺える。
醜い執着だと自虐する彼女に同情の余地無しなんてことがあるだろうか?

それに「大丈夫、大丈夫よ。」と優しく抱く彼女の哀れみに純真の愛を感じられて……。
一体私は誰を応援していたんだっけ、そんなだからうわーーーしか出てこなくなる。

それにしても、内藤という男の人生にとって「女」と「執着」はどうあがいても切り離せないものになりそうだ。
好きになってはいけないと思いながら始まった津出との恋が、二度同じ轍を踏むのか、それとも教訓を改めるのか。

指輪と共に知らず沈めた思い出のデレの涙がスピカの星より煌めいて見える。



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