終末の嘘のようです 5.兄弟の話

175 :名無しさん :2018/08/30(木) 17:52:19 ID:ZQwN9yT60
5.兄弟の話



誰にでもヒーローという存在がいるのではないか。
それは小さい頃の憧れだったり、今の目標だったり、自分ではなれないような、そんなもの。
俺にもいる。

俺のヒーローは俺の兄弟だ。






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176 :名無しさん :2018/08/30(木) 17:53:13 ID:ZQwN9yT60

兄者はなんでも出来た。
色々と無茶なことを言う。しかしその無茶を成し遂げる。
一番近くでそれを見ていた俺にとっては、兄者はすごい存在だった。

そう、『だった』。

兄者は成長するにつれ、普通の存在、普通以下の存在になっていった。
今はもう、ただ無茶を言うだけの人間。

小学校の途中までは学校へ通っていたが、いきなりとんと学校に行かなくなった。
それからは家から出ることもなく、俺の中での兄弟という存在は『恥』だった。

数週間前までは。

177 :名無しさん :2018/08/30(木) 17:54:02 ID:ZQwN9yT60

(´<_` )「兄者、どこに行くんだ。もう時間がないんだぞ」

( ´_ゝ`)「そうだ弟者よ。時間がないんだ俺達には」

(´<_` )「わかっているなら早く避難所へ戻るぞ」

( ´_ゝ`)「お前、家にいた時はあんなに外へ出ろとうるさかったじゃないか」

(´<_` )「その時と状況が全く違うからだ」


数週間で世界は変わった。
良くなったかと聞かれると、悪いの中のさらに悪い状態。

簡単に言うと、隕石が地球に落ちる。
俺たちは、もうすぐ死ぬ。

.

178 :名無しさん :2018/08/30(木) 17:54:53 ID:ZQwN9yT60

本当に名ばかりの『避難所』に家族全員で身を寄せ合っていた。
避難も何も、丸ごと潰れてしまうことはわかっているが、家族が一緒ならいいだろうと、そうなった。


( ´_ゝ`)「ノストラなんとかの大予言は外れたんじゃないんだよ」

前をフラフラ歩く兄者がポツリと言う。

(´<_` )「じゃあなんなんだ」

( ´_ゝ`)「ヒーローが助けたんだ、世界の誰もが知らないところで」

(´<_` )「厨二乙」

( ´_ゝ`)b「そのヒーロー、実は俺だ」

(´<_` )「兄者まだ生まれてないだろ」

( ´_ゝ`)b「前世…いや前前前世の俺だ」

兄者の悪い癖だ。しょうもないことばかり言う。
小さい頃は信じてた俺も、反抗期を迎えてからは信じていなかった。

俺は嘘が嫌いだ。

179 :名無しさん :2018/08/30(木) 17:55:52 ID:ZQwN9yT60
(´<_` )「なぁ兄者、いい加減戻るぞ。母者達が心配する」

( ´_ゝ`)「駄目だ弟者。妹者は怖がって泣いていた。姉者も元気がない。何故だかわかるか」

わからないはずがない。

それもこれもあれもどれも──

しかし愚問過ぎて答えを言う事すら面倒だった。
俺が答えないからか、最初から答えを期待していなかったのか、兄者は続けた。

( ´_ゝ`)「それもこれもあれもどれも、あの隕石のせいだ」

愚問愚答だ。世界中の誰もがわかりきった答え。

( ´_ゝ`)「家族が怖がっているのに、放っておけるのか?いや無理だ。それならどうするか」

( ´_ゝ`)「隕石に殺される前に、隕石を殺せばいいんだよ」

溜息すらも出なかった。
何を言いだすんだこの男は。
いかれている。
認めたくはないが俺の兄、目の前にいる男はいかれている。

180 :名無しさん :2018/08/30(木) 17:57:31 ID:ZQwN9yT60

( ´_ゝ`)「地球を救うんだ」

(´<_` )「地球を救う?24時間だか27時間だかは知らないが、愛もなければ金もない兄者に何が出来る」

( ´_ゝ`)「素振りだ!」

(´<_` )「は?」

( ´_ゝ`)「覚えていないのか弟者、俺は小学校の時リトルリーグに入っていたことを」

(´<_` )「1人だけ万年補欠だったあれか」

( ´_ゝ`)「確かに俺は万年補欠だが、バットを振れば必ずボールが当たっていた 体に」

(´<_` )「デッドボールじゃないか」

( ´_ゝ`)「犬も歩けば棒に当たる、兄者がバット振ればボール当たる。俺に当たったボールが、ホームラン級に跳ね返ったこともあるぞ」

(´<_` )「どんな体だよ」

( ´_ゝ`)+「球もでかいし、いける!」

何がいけるのか全くわからない。
似た顔で威張るのはやめてほしい。

181 :名無しさん :2018/08/30(木) 17:58:20 ID:ZQwN9yT60

(´<_` )「……それで、どこに向かってるんだ」

( ´_ゝ`)「弟者、よく考えてみろ。世界を救うヒーローのバットだぞ。最高に無茶苦茶カッコいいバットじゃなきゃ駄目だろう」

弟者にはわからんか、となぜか貶されているのが腹立つ。
この道をまっすぐ行った所にある店を思い出し、偉そうなわりに単純な思考だと思った。

(´<_` )「……町外れのスポーツ用品店に、最高に無茶苦茶カッコいいバットがあるのか?」

( ´_ゝ`)「行ってみないことにはわからんさ。しかし、言う前によくわかったな。流石俺の兄弟だ」

その兄弟を、今日ほど辞めたくなった日はないよ。

182 :名無しさん :2018/08/30(木) 17:59:16 ID:ZQwN9yT60

地球は今日で終わりだというのに、そんなこと知ったこっちゃないとでも言うように空は快晴だった。
気を抜くと、今日は『ただ天気が良くて数年ぶりに兄と外に出た日』という、なんでもない1日なのではと思えてくる。

しかしそんな気の迷いをボコボコにぶん殴るが如く、空を見上げるとぽっかり大きくて丸い月…隕石が目に入る。

ああ、本当に俺は死ぬんだ。


( ´_ゝ`)「…なぁ弟者よ、頼みがある」

(´<_` )「…聞くだけ聞いてやろう」

兄者がこちらを振り返ることなく話し出す。
どうせしょうもないことを言うんだろうなと思いながら、俺は続きを促した。

( ´_ゝ`)「俺より先に死ぬなよ。俺、お前の葬式だけは出たくない」

(´<_` )「先も後も何もないだろ…」

( ´_ゝ`)「お前の葬式より、結婚式に出たいんだ俺は。花嫁の父親より号泣して、参列者全員にドン引きされるのが夢だ」

(´<_` )「勝手に変な夢を見るなよ…」

( ´_ゝ`)「いいからさ、お前は死ぬな。死ぬ時は寿命で死ね」

(´<_` )「……」

兄者はまた無茶を言う。
俺の寿命は、きっと今日なんだ。
俺だけじゃなく、今日まで生きている他の人間達も。

183 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:00:04 ID:ZQwN9yT60



(´<_` )「……」

兄者の夢みたいな現実がもしあったとしたら、
俺は兄者の馬鹿みたいな号泣姿を、馬鹿みたいに泣きながら笑ったのだろうか。
わからない。
そんな未来はもう、来ないからだ。
夢も未来も、全部潰されるんだよ。


.

184 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:00:37 ID:ZQwN9yT60


馬鹿なことを言っている間に、スポーツ用品店の前まで来てしまった。

(´<_` )「開いてるのか?ていうか店として機能してないだろこれ…」

コンビニやスーパーなどの食料がたくさんある場所は荒れ散らかされていた。
しかしスポーツ道具しか置いていないからか、この店は荒らされていないようだった。
窓ガラスも割れていない。
その代わり、当たり前だが店員はいないようだ。

チラリと兄者を見ると、奴は何故か腕を振りかぶり、

( ´_ゝ`)「おー…いえす」

ガシャン!!!

185 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:01:20 ID:ZQwN9yT60

(´<_`;)「何をやってんだ馬鹿兄者!!!」

その辺にあった大きめの石を、店の窓ガラスに投げつけた。
当然の如く、無傷だった窓ガラスは無残にも割れ散る。

( ´_ゝ`)「ははは弟者、RPGの勇者たちもアイテムを手に入れるためにツボとかを割るだろう!必要悪だ!」

(´<_`;)「馬鹿だ!お前は今から馬鹿者だ!!バカモノじゃない、バカジャだ!」

( ´_ゝ`)「ちょっと何言ってるのかわからない…とりあえずバット探してくるぜ!」

(´<_`#)「…っ勝手にしろ!俺は犯罪の片棒は担がんからな!」

( ´_ゝ`)「オーケーオーケー弟者、そこで俺を待っててくれるだけで俺たちは共犯者だ!」

(´<_`#)「先に避難所戻ってるからな!!」

186 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:02:05 ID:ZQwN9yT60

(´<_`#)「あの馬鹿には付き合ってられん…」

いつからだったか。
尊敬していた、いつでもワクワクさせてくれた、兄者の言葉を信じられなくなってしまったのは。
兄者の言葉は絶対だと思っていた。
絶対叶えてくれる。
何故なら兄者は、俺の


「いないなぁ~」


幼い声が聞こえ、少し驚く。
こんな時だから、出歩く阿保はほとんどいない。特に小さい子は、親と避難している。
けれど、目の前をちょこまか走る子供がいた。

187 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:03:07 ID:ZQwN9yT60


ミセ*゚ー゚)リ

女の子だった。
道をあちらこちらフラフラと歩いている。迷子か?

ミセ*>ロ<)リそ「あうっ!」

俺が困惑していると、女の子は派手な音を立てて転んだ。
咄嗟に駆け出して覗き込む。
いてて…と小さく言いながら立ち上がった。

(´<_`;)「おい、大丈夫か?」

ミセ*゚ー゚)リ「う~…」

妹者と同じくらいの小さな女の子だった。
あちらこちらに怪我をしている。…今転んでついた傷ではないだろうものも見られる。

ミセ*;-;)リ「うう~…」

(´<_`;)「お、おい泣くな泣くな…痛かったな…」

ミセ*;-;)リ「お」

(´<_` )「お?」

ミセ*;-;)リ「お なかすいたぁ…」

少し変な子供かもしれない。

188 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:03:38 ID:ZQwN9yT60


ミセ*゚ー゚")リ「飴、ありがとう!美味しい!」

ポケットに飴玉が入っていて助かった。
?茲を丸くして飴を喜ぶ女の子を見て、いつの間にかポケットに飴を忍ばせてくれていた妹者に感謝した。

(´<_` )「…家族はいるか?迷子なら探すのを手伝うが」

ミセ* ゚ー゚)リ「えっと、えっとね。ミセリ、お父さんとお母さんとお姉ちゃんはもう、いなくて」

ミセ*゚ー゚)リ「でもね、おにーちゃんがいるの」

ミセ*゚ー゚)リ「優しくて、あったかくて、それにね、すっごく物知りなんだよ!」

(´<_` )「へえ」

女の子はパタパタと身振り手振りで話し出す。
元気な子だ。
良い『おにーちゃん』みたいだ。ウチのとは大違いだな。

189 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:04:20 ID:ZQwN9yT60

ミセ*゚ー゚)リ「…ほんとはね、おにーちゃん、本当のおにーちゃんじゃ、ないんだけど、み、ミセリだめな子だから、怒らせちゃって」

兄妹喧嘩でもしてしまったのだろうか。
女の子はシュンとして、また泣き出しそうだった。

待て待て、今泣かれたら俺が泣かせたみたくなってしまう。

(´<_` )「…えーっと…さっき『いない』って言ってたが…兄を探してたのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!おにーちゃんと、あとね…」

何故か言い澱む。言いづらいというよりは、どこから説明すればいいんだという顔だった。

190 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:05:10 ID:ZQwN9yT60


ミセ*゚ー゚)リ「えっとね、もうすぐ隕石が落ちてくるんでしょ?」

(´<_` )「…ああ」

ミセ*゚ー゚)リ「でもね、あっ、これ内緒のお話なんだけどね、地球は助かるんだよ!」

(´<_` )「は?」

ミセ*゚ー゚)リ「あの、あのねおにーちゃんがね、『兄弟のヒーローが助けてくれる』って」

ミセ*゚ー゚)リ「だから、おにーちゃんとそのヒーローさん達を探してるんだ!」

(´<_` )「何で…」

ミセ*゚ー゚)リ「頑張ってねって、おうえんするから!」

キラキラとした顔。
そのおにーちゃんとやらの言葉を、これっぽっちも疑っていないようだった。

191 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:05:44 ID:ZQwN9yT60


ミセ*゚ー゚)リ「地球は助かるっておにーちゃんが言ってたの」

ミセ*゚ー゚)リ「だからね、ミセリ怖くないの」

ミセ*゚ー゚)リ「まだしなないから、生きていられるから、おにーちゃんにね、たくさん謝って仲直りしたいの」

ミセ*゚ー゚)リ「もしおにーちゃんが許してくれたら、いっぱいお菓子買って、一緒に動物園行くんだ!」

笑顔だった。こんな状況で、こんな瞬間に。
この子にはあの隕石が見えていないのか?
この子には今生きている人間達の絶望した悲鳴が聞こえないのか?
あと少しで、お前も俺も俺の家族も、みんな…

(´<_` )「あのな」

俺は嘘が嫌いだ。
特にこんな、信じた人間が馬鹿を見るような嘘は。
そのおにーちゃんとやらは、こんなに小さい女の子を騙して楽しかったのか。胸が痛まなかったのか?

ミセ*゚ー゚)リ「?」

192 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:06:18 ID:ZQwN9yT60



まだまだ生きていけると信じて、兄とやらの言葉を信じて
それで、数時間後には落ちてこないはずの隕石に殺される。
あんまりじゃないか。

せめて、死に際にそんな絶望をしないように、俺が。

(´<_` )「…あのな、そのおにーちゃんとやらの…」

ミセ*゚ー゚)リ「うん!」



.

193 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:06:49 ID:ZQwN9yT60


(´<_` )「おにーちゃんとやらの言う、ヒーローってのは俺の兄のことかもしれない」

ミセ*゚ー゚)リ「えっ、そうなの?」

(´<_` )「そうだ。俺の兄は凄いんだ。今も隕石をぶち壊す武器を探しに行っている」

ミセ*゚ー゚)リ「すごい!すごいすごい!!」

ミセ*゚ー゚)リ「やっぱり、おにーちゃんが言ってたのは本当だったんだ!」

(´<_` )「…そうだな」


言えなかった。言えるわけがなかった。
この子が信じるおにーちゃんを、俺は嘘つきにはしたくなかった。
少しも疑うことなく、ただただ信じるこの子の笑顔を見て、昔を思い出す。

この子に自分の小さい頃を重ねてしまった。

194 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:07:27 ID:ZQwN9yT60


ミセ*゚ー゚)リ「ミセリ、おにーちゃんにヒーロー見つけたって言ってくる!どこにいるかわからないけど!」

女の子は忙しなく飛び出そうとした。
どこにいるかわからないのに、むやみやたらに駆け出すのを止めなくてもいいのだろうか。

(´<_`;)「あっおい、怪我は大丈夫か…」

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫だよ!」

大きく手を振りながら、こちらを見ながら走り出す。
また転んでしまわないかハラハラした。

ミセ*゚ー゚)リ「あっ、じゃあ、おにいちゃんとおにいちゃんのおにいちゃん、頑張ってねー!」

(´<_` )「ややこしいな…」


(´<_` )「…ん?…俺にも言ったか?」

ミセ*゚ー゚)リ「そうだよ!だって、『兄弟のヒーロー』だもん!」

女の子はそう笑顔で言って、去って行った。

195 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:12:52 ID:ZQwN9yT60


呆然と今起きたことを考えた。
最低だ。最悪だ。あんな小さい子に取り返しのつかない嘘をついた。

頭が後悔でいっぱいだ。
その頭を後ろから小突かれる。

( ´_ゝ`)「やっぱり待っててくれたのか弟者!」

(´<_` )「兄者…」

( ´_ゝ`)「ボーっとしてどうした?それより見ろ!こんなに普通で素晴らしいバットを手に入れてしまったぞ!カッコいいだろう、俺が!」

(´<_` )「兄者俺、嘘をついた…」

( ´_ゝ`)「嘘?嘘なんかつくか、お前は弟者だぞ」

(´<_` )「…違うよ。俺ついたんだよ、嘘」

( ´_ゝ`)「いーや。お前は嘘が大嫌いな俺の自慢の弟、弟者だ」

そういう身内びいきのフォローは今いらなかった。
俺はこれを言って、兄者に罵ってもらいたかったのか?
そういうわけではないが、話の通じない兄者に異常に腹が立った。

196 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:13:43 ID:ZQwN9yT60


(´<_`#)「…だから!ついちゃったんだよ!『地球は助かる』って!『俺の兄が地球を救う』って!大嘘を!!」

( ´_ゝ`)「お前は嘘なんかついてない。俺が嘘にはさせない」

(´<_` )「……は?」

( ´_ゝ`)「『お前の兄である俺が地球を救う』」

( ´_ゝ`)「そしたら、お前は嘘つきじゃないだろ」

(´<_` )「……は…」

197 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:14:20 ID:ZQwN9yT60


兄者は俺のヒーローだった。
何でも出来た。コレをやると言ったら、必ず出来た。
尊敬していた。いつだってワクワクさせてくれた。
何でも叶えてくれると思っていた。
だって、ヒーローだから。

いつだったか、同級生と憧れの対象について話をしていた。戦隊モノの主役や映画の主人公を挙げる同級生の中で、俺は迷わず兄者の名を出した。
兄者はすごいんだ、何でもできる、いつか世界だって救えるんだと。
同級生達は口々に批判した。
嘘だ、絶対嘘だ、嘘ばっかり、そんなこと出来るはずがないと。

そんなことはないと否定しても同級生達は俺を指差して言う。

「嘘つき」

それから俺は嘘が嫌いになった。
…それから兄者は、部屋に引きこもるようになった。

198 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:14:56 ID:ZQwN9yT60


( ´_ゝ`)「俺はな、ずっとずーっと今日の為に引きこもってたんだ」

(´<_` )「…どういうことだ」

( ´_ゝ`)「俺がただ部屋でヒキニート生活を送ってるだろうと思っていただろう!しかしその実!」

( ´_ゝ`)「俺はずっと鍛えていた!地球を救うためにな!」

(´<_` )「は」

(´<_` )「はははは…はは」

(´<_`*)「あはははははは!」

( ´_ゝ`)「狂ったか」

(´<_` )「兄者には言われたくない」

199 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:15:40 ID:ZQwN9yT60


兄者も俺も、ずっと昔から馬鹿だった。馬鹿で、馬鹿なヒーローだった。

(´<_` )「兄者、俺は…あの子に嘘をついたか?」

( ´_ゝ`)「嘘なんか言ってない。俺を信じてくれる人間がいる限り、『俺が地球を救う』ことは真実だ」

(´<_` )「…そうか…」

兄者がそう言うなら、きっとそうなのではないかと思えてきた。俺は現金だ。

日が落ちてきている。
これが最後に見る夕焼けか。

…いや、最後ではないか。
これからも、何度でも、見る内の一つ。
きっと結婚式で号泣する兄者を見る日にも、同じような夕焼けがあるはずだ。

晴々とした気持ちだ。
月に似たあいつが、だいぶ大きくなった。
それでも、不思議と怖さがなくなっていた。

200 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:16:16 ID:ZQwN9yT60




( ´_ゝ`)「弟者」

(´<_` )「ん?」

( ´_ゝ`)「ありがとうな。お前がいてくれたから、いつだって俺はヒーローでいられたんだよ」

( ´_ゝ`)「お前は、弟者は、俺にとってのヒーローだ」

201 :名無しさん :2018/08/30(木) 18:17:53 ID:ZQwN9yT60

兄者が珍しく真面目な声でそう言った。
ふと、あの子の言葉を思い出す。

(´<_` )「……『兄弟のヒーロー』かぁ…」

( ´_ゝ`)「ん?」

(´<_` )「いや、何でもない。それで、どうするんだ」

( ´_ゝ`)「そうだなぁ、山にでも登るか?」

高いところで返り討ちだ、と兄者が素振りをする。
ビュンと風が鳴る。

(´<_` )「山か…その前に一つ」

( ´_ゝ`)「何だ?」

(´<_` )「俺もバットを取りに行っても、いいか?」

( ´_ゝ`)「弟者お前、野球出来るのか?」

(´<_` )「当たり前だろ、俺もヒーローなんだから。…そうだ、もう一つ」

( ´_ゝ`)「何だ」

(´<_` )「俺も、兄者の結婚式で号泣すると思う」

オレンジ色に染まる世界で、兄者の笑顔を久しぶりに見た。


あの子はおにーちゃんに会えただろうか、そう考えながら、武器を調達しに行った。



(5.兄弟 終)




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