終末の嘘のようです 4.彼の話

128 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:10:52 ID:VLm9cRAo0
4.彼の話


彼女は僕のことを、見た目も中身も周りの環境も全て恵まれた、何もかもが完璧な優しい人間だと思っていただろう。
彼女に限らず、僕に接する人間は皆そう思っていたはずだ。

でもその実、僕は醜いものを見るのが大好きな、歪んだ人間だった。

きっとそのことは、死ぬまで誰も知らないまま。







.

129 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:11:29 ID:VLm9cRAo0

(´-_ゝ-`)「ツン、寒くないかい」

川д川「ええ、大丈夫よ」

(´-_ゝ-`)「ツンは寒いのが苦手だからね。無理しないようにね」

川д川「ありがとう」


説明をすると、この暗い女は貞子という。
ツンは僕の妻。彼女はツンの妹。
僕は今、彼女のことを妻だと思って接している
フリをしている。
ついでに言えば、目も見えない
フリをしている。

130 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:11:57 ID:VLm9cRAo0


何故そんな七面倒なことをしてるのかというと、実は僕も全てわかっているわけではない。
ただ楽しい。それだけは確か。

彼女は僕を心の底から満たしてくれる最高の存在なんだ。

彼女と、彼女の姉であり僕の妻であるツンは血の繋がっていない姉妹だった。
皮肉なことにツンは、妹が持っていないものを全て持っていた。

人間は自分の持ち得ない物を持つ人間を羨む。妬む。嫉む。


けれど彼女がツンに対する感情は、『劣等』でも『嫉妬』でもないと、気付いた人間は恐らく僕だけだろう。
だってツンはおろか、彼女本人すら、気付いていないみたいだったから。

131 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:12:28 ID:VLm9cRAo0


(´-_ゝ-`)「今日は静かだ」

川д川「…そうね。何か壊れる音も、誰かの悲鳴も聞こえないわ」

(´-_ゝ-`)「じゃあ、周りには誰もいないのかい」

川д川「多分」

(´-_ゝ-`)「……ツン、愛してるよ」

川д川「……ええ」

132 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:13:23 ID:VLm9cRAo0

ゾクゾクと背筋に何かが走る。
くだらないこの言葉を『本物』のツンにもよく言っていたが、その時はなんともなかった。

ツンは恍惚とした顔で僕を見つめるだけだった。
貞子は、彼女は
僕が見えていないと思っているからか、はたまた無意識か、とてつもなく嫌悪に満ちた顔をする。

その顔を見るのが楽しい。
キモチイイ。
そんな顔で、目で、僕を見てくる女はいなかった。

ああ、あと少しで僕たちは死ぬというのに、こんなに楽しくて良いのだろうか。

133 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:14:25 ID:VLm9cRAo0

そう、僕たちは死ぬ。
隕石に殺される。


全ては数週間前に始まった。

突然だった。
テレビもネットもラジオもあらゆる物が意味のわからない結論を流した。

「世界はもうすぐ滅亡する」

(´・_ゝ・`)(何を言っているんだろう)

意味がわからなかった。
馬鹿みたいなテレビの企画だと思ったがそんなことはなく、1番最初に正気になって狂ったのはツンだった。

泣いて喚いて何故と答えのない問いを繰り返す。
部屋を飛び出たかと思えば妹の部屋へ向かい暴力三昧。

本当にツンは馬鹿なんだなぁ
と全身全霊を込めて哀れんだ後、なだめるフリをした。

かくして僕達は大きく豪華な家の中で、残りの日を過ごすことになったのだ。

134 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:15:16 ID:VLm9cRAo0


(´・_ゝ・`)(どうしたものかな)


もうあと少ししかない、残された時間をいかに有効的に使うかを僕は考えた。

まず始めに、強盗がやってきたのをこれ幸いとし
彼女達の親を襲った。
強盗も邪魔だったので処分した。

さて、あと邪魔なのは。


.

135 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:16:39 ID:VLm9cRAo0

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、デミタスさん…良いでしょう」

ツンは馬鹿だった。
こんな時でさえ発情し、見たくもない下着姿でクネクネと僕にまとわりついた。
自分の親が『強盗に』殺されたというのに。

(´・_ゝ・`)「ツン…流石に…こんな状況だし、何より貞子ちゃんもいる」

ξ゚⊿゚)ξ「あんなやつ、無視すれば良いのよ。だから、ね?」

ツンの手が下半身へ伸びる。吐き気がする。

ξ゚⊿゚)ξ「あともう少ししかないんだから、楽しみましょう?」

顔だけは上等なツンがニタリと笑う。
相手が僕でなければ喜んで突っ込んでいたんじゃないだろうか。

(´・_ゝ・`)「………ああ、そうだね」

(´・_ゝ・`)「あと少しを、楽しもうか」

136 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:17:36 ID:VLm9cRAo0





ツンは話さなくなった。静かになった。
明かりがついていないことが勿体ない。
ああ、楽しめそうだ。ありがとう、ツン。





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137 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:18:06 ID:VLm9cRAo0


僕はツンもツンの親もツンが住んでた家も全部嫌いだった。
どうせ隕石が落ちたら何もかもがなくなってしまうけれど、僕は汚いものでも自分で処理したい人間だ。

なので燃やした。彼女達の家を。

ぐちゃぐちゃになったツンを、火がまだ回っていない場所に置く。

(´・_ゝ・`)「やぁ、やっと見られる顔になったじゃないか、ツン」

ツンは喋らない。

138 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:18:47 ID:VLm9cRAo0

川д川「…お姉ちゃん?デミタスさん?なんか、焦げ臭い…」

(´・_ゝ・`)「!」

蚊の鳴くような小さな小さな声が後ろからした。

物音と声に反応したのか、貞子がフラフラとこちらへやってくる。

(´・_ゝ・`)「…」

(´-_ゝ-`)

(;´-_ゝ-`)「さ、貞子ちゃんかい!?」

川д川「デミタスさん…どうしたの?」

(;´-_ゝ-`)「火だ!燃やされてる!さっき変な奴らがこの家に火を付けて…」

川д川「えっ」

(;´-_ゝ-`)「ツンと君を探してたら、柱が焼け落ちてきて、目が見えないんだ!」

川д川「そ、そんな…」

(;´-_ゝ-`)「ツン…ツンは近くにいるか?!」

川;д川「わ、わかんな…」

139 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:19:19 ID:VLm9cRAo0



ギギギ

川д川「え」

バッドタイミングと言うのか、ベストタイミングと言うのか。焼けた天井が彼女に崩れ落ちてきた。

ああ、ああ。
神を信じたことはないが、今確実に僕が楽しめるよう世界が動いていることはわかった。

まぁもしもいるなら、隕石なんて落ちてや来ないはずだけどね。

140 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:19:57 ID:VLm9cRAo0


(;´-_ゝ-`)「ツン!貞子ちゃん!?すごい音がしたけど、2人とも無事か!?」

川д;川

ぼうっとしていた彼女が、僕の声で肩を弾けさせた。

彼女が気を失っている隙に、ツンを彼女の上に置いておいた。
彼女はきっと、『ツンは自分を守って死んだ』と思っている。
そんなこと、死んでもあり得ないってわかっているだろうに。

『自分のせいで死んだ姉の夫』が声をかけて
どうなるだろう
どうするだろう

彼女を追い詰めるためにまるでゾンビのように、一歩また一歩と進む。

141 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:20:43 ID:VLm9cRAo0



川д川「……」

彼女は青白い顔を振り、何かを決意したような顔で僕を見、

川д川「……デミタスさん、私はここよ」

川д川「でも」

川д川「…でも、貞子が、妹が…」

(´-_ゝ-`)「え……?」

142 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:21:19 ID:VLm9cRAo0



一瞬何を言ってるのかわからなかった。

『貞子が』
『妹が』

『貞子』は君だろう?
『妹』と呼べるのはその姉の…。

様子が分からなすぎて、薄眼を開く。


川-川


ボヤけて狭い世界で彼女は
今までに見たこともないような醜い顔で笑っていた。


.

143 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:22:20 ID:7dAVL0eg0

(´-_ゝ-`)「ツン、ツン。ご両親と貞子ちゃんの分まで、僕達は最後まで生きよう」

川д川「…最後まで?」

(´-_ゝ-`)「うん。僕は、ツンと地球が滅んでしまう時まで、愛し愛されて過ごしたい」

川д川

脇腹が痛い。
笑いを堪えながら喋るのは腹にくるものなんだな、初めて知ったよ。
彼女は薄ら寒い恋愛小説などが好きだったことを思い出して呟いた言葉が、僕の腹筋と表情筋を鍛えた。

(´-_ゝ-`)「ツン?どうかしたのかい?」

川д川「……いいえ、デミタスさん。なんでもないわ」

なんでもないことなんてないだろう?
そんなあからさまな『大嫌いです』って顔をしておいて。

144 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:22:53 ID:7dAVL0eg0



ああ、楽しい。
君がツンのフリをするのなら、僕はそれに気付いてないフリをしてあげる。
楽しいなぁ、楽しい。
僕はこの時から今まで、楽しい時間を過ごしているよ。

145 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:23:33 ID:7dAVL0eg0


(´-_ゝ-`)「ツン、お腹空かないかい?」

空腹を訴える。目が見えないフリは自らの動きを封じてしまい面倒だ。
けれど、甲斐甲斐しくツンのフリをする彼女を見るのは愉快だった。

(´-_ゝ-`)(君は知らなかったみたいだけど)

(´-_ゝ-`)(ツンはそんな女じゃなかったよ)

彼女は姉のことを誤解していた。自分以外の人間には優しく接していると。
しかしツンは、自分に有益なものに猫撫で声で近寄るだけで、『優しい』という言葉からは遠い人間だった。

僕の見た目と肩書きが大好きなツンは、自分を良く見せようと努めていたけど
僕は彼女の醜さを見抜いていたから意味はなかった。

146 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:24:09 ID:7dAVL0eg0

ふいに、何かを思い出したように彼女が顔を上げる。

川д川「……そういえば」

(´-_ゝ-`)「ん?」

川д川「いえ…コンビニから帰る時にね、道にヘアアクセサリーが落ちてたの」

(´-_ゝ-`)「ヘアアクセサリー?」

川д川「そう。深い夜のような濃い青に、キラキラと星が散りばめられたような、天の川みたいな綺麗なヘアアクセサリー。……誰か、落としちゃったのかしら」


(´-_ゝ-`)

147 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:24:38 ID:7dAVL0eg0



『彼女』だった。
『ツン』じゃない。『ツン』はそういった感性を持っていなかった。
今のは素の『貞子』の発言だ。

フリを忘れるほど、印象深いヘアアクセサリーだったのだろうか。



.

148 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:25:20 ID:7dAVL0eg0

川д川「ご、ごめんなさい。私ったら、変な事」

声が緊張している。失言だったと気付いたのだろう。
けれど彼女はそれ以上に失敗を犯していることは気が付いてはいなかった。
だからまだ、ツンのフリを続けている。

(´-_ゝ-`)「変?何も変じゃないさ。……貞子ちゃんみたいだ」

川д川「……あの子は、変だったから」

(´-_ゝ-`)「そんなことない、君の妹だろ」

川д川「……」

思わず『貞子』に対してムキになってしまった。
『貞子』が変だったのはその通りなのに、なぜ僕は否定して彼女を庇ったんだろう。

川д川「…食べましょ、デミタスさん」

(´-_ゝ-`)「……うん」

149 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:25:55 ID:7dAVL0eg0



静かで、重たい。
彼女、貞子は変だった。

いつだって僕に心を許すことはなかった。
いつだってその目に映るのも心にいるのも、僕ではなかった。

そんな彼女を僕は見るのが楽しくて。

150 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:26:41 ID:7dAVL0eg0

(´-_ゝ-`)「ツンは」

川д川「え?」

(´-_ゝ-`)「ツンは怖くないのかい」

川д川「……死ぬことに対して?」

(´-_ゝ-`)「ああ」

川д川「……怖いわ」

(´-_ゝ-`)「……そうだよね、すまない。変なことを聞いてしまって」


きっと今のは『ツン』のフリだったのだろう。
言葉の割に、薄目でみた彼女の顔は平然としていた。

151 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:27:34 ID:7dAVL0eg0

彼女は変だ。
死が怖くないのか。
姉は嫌いではなかったのか。
そんな女のフリをして何になる?
どうせ僕も彼女もあと数十時間で死ぬ。
目が見えないという僕など捨てて逃げればいいのに。

彼女は馬鹿だ。
僕を好きにならない。
彼女は馬鹿だ。
僕を嫌っている。
彼女は馬鹿だ。
虐げられてきた姉を、
彼女は。

152 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:28:11 ID:7dAVL0eg0


(´-_ゝ-`)「僕もね、怖いんだ」

自然に言葉が出た。
怖いという思いは、僕にだってある。

(´-_ゝ-`)「…この缶詰が最後の食事ってのも、悲しいな。ツン、君は最後に何が食べたい?」

川д川「え?えっと、……ごめんなさい、思い浮かばないわ」

少し考えるも、『ツン』が食べたいものなど思い浮かばないのだろう。
彼女は答えなかった。

(´-_ゝ-`)「…まぁ、そうだよね。僕はね、オムライスが食べたい」

川д川「オムライス?」

(´-_ゝ-`)「そう。……覚えているかな、君に初めて作ってもらった料理がオムライスだったんだ」

川д川「ああ…」

153 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:28:50 ID:7dAVL0eg0


(´-_ゝ-`)「…君は席を外していたから知らないだろうけど、貞子ちゃんが面白いことを言ったんだよ」

川д川「え?」

(´-_ゝ-`)「『好きな人に手作りのオムライスを作るのは、愛してるって意味だ』って。読んだ小説に書いてあったんだって」

川д川「そんなこと……」

(´-_ゝ-`)「……その言葉で僕はツンと結婚しようと思ったんだよ」

154 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:29:39 ID:7dAVL0eg0


これは
これだけは本当の話だった。

僕はツンが料理をしているところを見たことがなかった。
恐らくあれは貞子が作ったものだったのだろう。
素朴な味のオムライスだった。

あまりの普通さに思わず「美味しい」という言葉が溢れた。

向かいの席でツンがいかに良いか必死にプレゼンをしていた貞子も、その時だけは小さく笑って、先程の言葉を述べた。

こんな、人生が不幸そうな人間から『愛』という言葉が出るとは思わなかった。

その新鮮さに、僕はこの姉妹を、側で見たいと思ったのだ。
そしてツンと結婚した。


(´-_ゝ-`)(…懐かしい。こんな時にこんなこと思い出すなんてなぁ)

155 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:31:20 ID:7dAVL0eg0

静かな空間に、彼女の啜り泣く声が聞こえた。
必至で声を出さないようにしている、その姿を見て何故だか臍の下が痛くなった。

川;д;川「…っ、」

(´-_ゝ-`)「…」

姉にどんなに虐められても涙を見せなかった彼女が、ボロボロと泣いている。

何故泣いているのかわからない。
わからないけれど目を背けられなかった。

グシャグシャの汚い顔。
もっと近くで見たかった。もっと近くで聞きたかった。
気がついたら、彼女に声をかけていた。

156 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:32:13 ID:7dAVL0eg0


(´-_ゝ-`)「ツン。お願いがあるんだ」

川д川「…なぁに、デミタスさん」

(´-_ゝ-`)「僕達はあと3日もしないで死んでしまう。その前に、君と抱き合いたい」


急な提案だというのは自分でもわかっていた。
こんな状況で発情したツンを、酷く醜いものとして見ていたし、軽蔑もしていた。


最後だから。最期だから。許してほしい。


(´-_ゝ-`)「死が近づいてくるのを忘れて、生きてる君を感じたいんだ」


ツンなら応えてくれる。ツンなら。
今君はツンなのだから。いいだろ。

157 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:33:05 ID:7dAVL0eg0





川д川「……ご、ごめんなさいデミタスさん。私、私その、……そんな、気分になれなくて…」

川д川「ごめんなさ、ごめんなさい…」



彼女の答えは予想外だった。





.

158 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:33:43 ID:7dAVL0eg0



(´-_ゝ-`)「はは、はははははははははっ」


おかしい。
可笑しい。

断られた。
拒絶された。

おい、お前は誰だ?

『ツン』だろう?
『ツン』なら喜んで僕のをしゃぶるぞ
死ぬ数分前まで僕に抱かれたがった女だ。


わかってる。

わかっている。

彼女は僕が嫌いだ。

彼女は、彼女が、

そんな彼女が僕は、

159 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:34:44 ID:7dAVL0eg0

川д川「ど、どうし…」

(´-_ゝ-`)「ははっ、は……ごめんごめん、大丈夫。嘘だよ、君があまりに暗くなっていたからね、ちょっとした冗談だったんだ、ごめん」

川д川「そう、なの…ごめんなさい、びっくりしたわ」


ホッとしたような声。
なぁ、君は全く気がついてないな。


(´-_ゝ-`)「…冗談、だけどさ。キスぐらいは、してもいいかな?」

川д川「え…」

(´-_ゝ-`)「ごめん、やっぱり怖いんだ僕は。死ぬことが」

(´-_ゝ-`)「君と共に死ねるのにね」

笑いを堪えるのを必死に耐えた。
自分でも鳥肌が立っている。

川д川「……わかったわ」

(´-_ゝ-`)「ありがとう」

薄目で彼女の顔を覗き見る。
眉間に皺が寄った酷い顔だ。

肩に手をやる。
はは、君は何も気が付かない。

160 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:35:24 ID:7dAVL0eg0



(´-_ゝ-`)「…なぁ、ツン。君は、僕を愛しているかい」


不思議だ。こんなよくわからない場所で、まるで結婚式の誓いのキスのような言葉。行為。


川д川「………勿論よデミタスさん」

川д川「私は、貴方を愛してる」

(´-_ゝ-`)「…そうか、ありがとう」

(´-_ゝ-`)「ツン、僕もツンを愛してるよ」

161 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:36:28 ID:7dAVL0eg0






川д川「な、…っ、…う、あっ!…、!?」

(´-_ゝ-`)「知ってるかい?」

嘘つきは閻魔様に舌を抜かれるんだよ

川д川「あ、あ、………、」

彼女は言葉にならない声を発している。
彼女は真っ赤な真っ赤な身体になった。

彼女は、最後まで気が付かなかった。

ツンのフリをするには、ツンとは全く声が違うこと。体格も違うこと。
そこに気が付ければ、僕の不自然さに気が付けただろう。

血は繋がってないが、馬鹿なところはそっくりだったよ。


(´-_ゝ-`)「大丈夫、僕もすぐ行くから」

(´・_ゝ・`)「愛してるよ、ツン」

162 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:37:21 ID:7dAVL0eg0


君が見えなくなるのとは反対に、僕はゆっくり目を開けた。
「何故?」とでも聞きたそうな顔の君と目が合う。

何故。
何故だろう。
何故僕は邪魔なものを全て消して
目も見えないフリまでして
君と最後の時間を過ごしたのだろう。

君はもう一つ、気が付いてなかったみたいだけど

君は彼女を×していたんだよ。

僕は、そんな君を。

163 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:37:58 ID:7dAVL0eg0


(´・_ゝ・`)「はは、馬鹿みたいだ」

ずっと変な人間だと思っていた。
君とツンと一緒にいればドロドロ汚い感情を見れると思っていたんだよ。
ただそれだけ。そう、それだけだと思っていた。
君に対する感情なんて。

(´・_ゝ・`)「…オムライス食べたかったなぁ」

君についた真っ赤な血で思い出す。
君が作ったあのオムライス。
『オムライスを作るのは愛してるという意味だ』
その言葉が本当になることはなかった。

164 :名無しさん :2018/07/17(火) 22:38:33 ID:7dAVL0eg0



( 愛してるよ『ツン』)



最後の言葉まで嘘だなんて、皮肉なものだ。

僕は『君』のことを。


(´-_ゝ-`)


今すぐにそっちに行くよ。少しだけ、待っててくれ。

君の血でベタベタの缶切りを、僕の首に走らせた。






(4.彼 終)




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