【感想】( ^ω^)文戟のブーンのようです(第七回品評会)




( ^ω^)文戟のブーンのようです[5ページ目]より
ブーン系小説創作板(ファイナル)



[この世で最も尊いようです]

幼稚くさいオノマトペが語り口と相まって、モララーの学の程度や社会的地位を示していたが、多少やり過ぎの感がある。
屋敷に対してのそれには皮肉の色が見え隠れするから頷けるが、
自身の行動にまで「キョロキョロ」「テクテク」といった浅学な印象を付ける必要があっただろうか。

高校生くらいかなと思った矢先、レッグ、アペリティフと言った用語、香辛料を判別できるだけの舌とその知識を披露され、
そこでようやくモララーがどういう層に属する人間なのかがなんとなく掴める。
無い無い尽くしといいつつも、少なくとも一般的なサラリーマンくらいには属しているらしい……。
それにしては、ギャップがありすぎだ。
少なくともモララー自身の行動にまで擬音を使ってほしくなかった。
年齢や容姿といった人物像を固めるための情報が少なすぎたこともあって、
読み終わった今でさえ特にモララーという人物に若干のモヤが掛かったままである。


マニーの屋敷を玩具箱に例えるような嫌味。
今までのモララーの食の嗜好を一変させる料理。
何か黒々とした思惑や衝動が生まれてもおかしくない要素が散りばめられながら、
一切アクションの無いまま完結してしまったのが少しもどかしい。

もちろんそれまでの交友関係から恨みつらみや妬みが見えるような誤解はしていない。
物語の展開と終着点そのものにケチを付ける気は毛頭無いけど、
だったら上のような「布石になり得る要素」は削ぎ落してもよかったのではないか。
もっとも、料理に対する感想は正直にならざるを得ないところ。
いかんせん玩具箱のくだりが諍いの種になりそうだと期待したための、期待の上乗せにすぎない。
よくもこんな料理食わせやがって、これから先俺は何を食っても犬の糞にしか思えないじゃねえか!みたいな発展を期待したわけです。


空想上の食べ物を美味そうに見せる、その表現は難しかったはずだ。
イラスト等の視覚情報に頼らず、文章のみで読者が食指をそそられるのはイメージが頭の中で浮かぶからだ。
想像のつかない未知が多くなるほどそそられなくなる。

本作はメインの空想食材一つを取り囲むように現実の、食材、あるいは形式、あるいは比喩を付け足して、
料理一品一品を想像するためのとっかかりがいくつも用意されていた。これが良かった。
『ドラゴンの卵』という空想食材に対して「茹で卵」という形式、味付けには産地こそ空想上のものだが「塩」を使い、
「ムースのように」「クリームチーズ」「鶏」といった例えがなされる。

ファンタジー食材を取り扱う上で、読者の想像力は均一ではない故に、
読者に与えるイメージの平均化を図らなければならない……。これが非常によく出来ていた。
何か偉そうなことを言っているが、このような見解はまさしく本作を読んで気付かされたことだ。


読んでてめちゃくちゃ美味そうに見えた。
画面の前で永遠とおあずけを喰らわされるしかない現実がもどかしい……。
ただしスープについては未知が多くて、あまり惹かれなかったことは付け足しておく。ここが惜しい。


食事描写が上手いというよりは、食べたときのリアクションが良い。
何もかも一瞬で平らげるもんだからマジに極上の美味なんだなってのが伝わってくる。
そもそも、人智を超えた究極の体験を筆舌に尽くすことがそもそも無謀なのだから、
一般人代表のモララーにあんまり長々と描写されてもお前何者だよとなってしまっていただろう。


食卓のすぐ横で凄惨な虐待が行われている……。
ややもすれば食事描写を楽しんでいるのに食欲が失せるという危機を孕んでいたが、
そうはならない不思議なバランス感覚。
可哀想と思う反面、感情がモララーと同期してしまう、
家畜よりも残虐な扱いを受けるドラゴン娘に家畜然としたものを押し付けてしまう。

言ってしまえば踊り食いや丸焼きとさほど違わないのだ。
そう思い出して、ああ、そういえば別に普通のことだったな、と納得してしまう自分がいる。
そこから後悔や反省の念が全く生まれないのが真の恐ろしさかもしれない。
対象が人間じゃないからセーフ、なんて常識がいつの間に根付いてしまっていたんだろう。
マニーやモララーを完全に敵視できないところに、本作の意義があるのかもしれない。






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( ゚∀゚)ドラゴンと紡ぐ前日譚のようです


普段人々がどういう生活を送っていて、どうやってこの世界が回っているのか、
そんな「異世界の日常」がよく伝わってきた作品だった。
異世界が舞台で、その環境を深く読者に知ってもらおうとすると、どうしても説明が多くなる。
それを何も考えずに書くと単調で淡白な印象になりがちだと思うのだが、本作ではそのどれもに温もりがある。

この国、この町ではこういう習慣があって、この店はこういう特徴があって、っていうのが、
冒険者だけに影響するものばかりでなく、そこで生きる皆に関係するものが多かったからだ。
だからか、蓋を開けてみれば生活する上でやってることは現実世界とたいして変わらない、
その異世界の常識にスルスル順応できた気がする。

そしてその常識も、言われてみればなるほど、と、ちゃんと納得できる回答が用意されていたのがまた良かった。
とにかくここではこれが常識なの!って感じではなく。


>国を挙げて討伐にかかれば軍の人員が割かれ、他国への隙となる。
>一般人では対処しきることができない。
>街にいる警備兵達は防御に特化しており、殲滅には向かない。

>ならば、誰が人々のため、戦いに赴くのか。


現実に当てはめてしまうと、自衛隊も警察も動かせないから、警備会社がありますよ、ってことだよね。
例え話するとなんとなくチャチになっちゃうけど……。
ちゃんと納得できる理由がある。


中でも、「物理耐性だと孵化の邪魔になるかもしれないから止めたほうがいい」ってのには、
ジョルジュと一緒になって「なるほど、それは考えなかったな」って感心してしまった。
正直ここがきっかけでますますこの世界観にのめり込んでいくことになった。


この作品を読み始めた当初から、あたたかい雰囲気を感じ取れた。
必ずハッピーに終わってくれるだろうって安心感がありました。
しかしもうちょっとその期待を裏切るような展開があってもよかったかなと思う。


>戦いに集中する部分と、生にしがみつくために未来を思う部分。
>この二つに思考を占領されたジョルジュは、パキリ、と小さな音がしたことに気づかない。


ここ、もちろん最初は卵にヒビが入ったんだろうなと思ったんだけど、
もしかしたらジョルジュの使う剣にヒビが入ったんじゃ?と思い直した。
で、ここで剣が折れてさらにジョルジュが追い込まれれば面白いぞ、と期待してしまった。

ジョルジュとドクオは本当にギリギリの死闘を繰り広げていたと思うんだが、
個人的にはイマイチそこまで追い詰められている感じが伝わらなかった。ここが惜しい。
ハッピーに終わるだろうという予定調和が崩れる兆しすら見えず、
よって物足りなさから余計な詮索に繋がってしまったのかもしれない。
生意気な意見で申し訳ないが……。


ピンチを察したかの如くドラゴンが生まれ、一瞬で敵を打ちのめす。
それから相棒となってジョルジュに寄り添う。
期待を裏切らない幕引きはとてもよかった。

真っ白い姿をして生まれたドラゴンと、対照的に黒い鎧で全身纏っていたドクオ、
思わせぶりなセリフを残していったが、一体何者だったのか、想像が膨らみますね。
輪廻転生して人間となった姿だったか、記憶と感情を読み取れる術士だったか、とか。
個人的にはジョルジュの恩師を食ったというドラゴンと同一人物とは、あんまり思えないかなぁ。

一人の冒険者のこれからの旅路を、白い龍が希望となって明るく照らす、
活力あふれる未来のお話を期待してしまう、読後感爽やかな気持ちの良い短編だったと思います。






狩人と龍のようです。

文章が上手い。なーんて簡単な言葉で言い表せないほど、なんというか、洗練されてる。

古典的な言い回し、穿った語彙の選択、全て必然的なものを感じる。
この物語を書き上げる上で、この一稿こそがほぼ限りなく完璧に近い、と言ってしまっていいんじゃないだろうか。
これ以上どこを手直しする必要があるんだ?って感じだ。
それくらい完成されていて、そして私の好みドストライクな文章だった。


>森から山の斜面へ抜けると、吹雪に磨かれた氷雪が、一面鏡のように輝いており、そこを亀裂が痛々しく這っていた。

>染み渡りにまぶされた淡雪の、片栗粉を踏んだような音が心地よい。

>空を睨む、枯れ葉のように笑いが擦れて穴に響いた。


「ススキがうねる」「めらめらと靡くたてがみ」……挙げていくとキリがなくなる。
これら列挙したものが特にめっちゃ好きだ。

普段使わない、パッと出てこないような比喩、だけど気障っぽい臭さは感じさせず、
思い起こせばどこかで聞いたような表現の気もするが、目新しく画期的なもののようでもある。
それだけこの物語にピタリと嵌まるパズルの1ピースのようだったと思う。
もうこれだけで読み進めるのが楽しかった。


もうひとつ特徴的なものとしては、要所で文末に「!」が使われている点。
単純に迫力が増す。速度も出る。

迫力あるシーンをより大迫力へ、まるでその時だけ一陣のつむじ風が通り抜けるような、
あるいはその時だけウンと遠くの対象まで急速に視界がズームアップしたような、そんな感覚に陥る。
まるでジブリアニメーションのように綿密なカットがコンマ単位で駆け抜ける。

特に序盤のこのシーンはよかった。


>─左目のすみで風がきらめいた!水面がまっしろに砕け、影が荒々しく迫ってくる!

>影の進路に引き金を引く!弾は、出なかった。


弾は出なかったというオチを、連続するシーンの終わりに組み込んでいるからこそ、
この一節を読み終わった直後、一呼吸置くタイミングが生まれていると思う。
ドクと同じように「何が起きた?」と一瞬逡巡させられる、そんな間が生まれている、テンションの落とし所が上手かった。


クゥに鉄砲を四発食らわせようとするシーンも、
三撃目は「!」が無く、よって克明な描写がなくても傷のひとつも付いていないんだろうな、ということが伺える。

そういう、「!」の置き方や文の構成がいちいち効果的に見えるからこそ、「ほぼ限りなく完璧に近い」という先ほど述べた評価に繋がっている。



何故ドクは龍にとどめを刺さなかったのか、龍は最後の一撃を甘んじて受けようとしたのか。
龍は人間に攻撃でなくいたずらをするのか。
里で龍の名を誰も口に出さなくなったのはどうしてか。
あの素晴らしい龍と決別してまで、それでもドクが山里を捨てなかったのはどうしてか。

色々な問いが浮かび、こうかもしれないと想像するが、しっくりくる答えには至らない。

「どうして自分は誰の事もわからないのだろう。」
その呟きにはもしかしたら己自身をも含んでいるのかもしれない。

だから単に同情心や孤独な境遇にシンパシーを感じて撃たなかった、それだけとも言い難いし、
里に残ったのも、龍を諦めたから、の一言で済むものじゃないと思う。
あるいはドク自身もわかっていないんだから。


>空にはもう、真っ赤な夕焼けのその向こうまで行ってしまった龍に代わり、銀の星と三日月が浮かんでいた。


闇に融けた体躯に煌めく銀の混じり鱗と、目を笑わせる隻眼の龍の顔。
そんな面影を知っているのはドク一人で、里人は空の向こうに行ってしまった龍をいつまでも睨み付ける。

腹立たしいほど場にそぐわない清々しい風と空、
その下では蟠りと誤解を孕んだ空気がいつまでも辺りを漂って消えない。
こんな混濁した空気をいつまでも吸えないドクは一人立ち上がれず、寝そべったまま。
周りには人がいるけど、目線も、見てるその先も違うから結局、独りぼっち。

そんな情景を網膜に焼き付けてフェードアウトさせる静かな幕引き、大変良かった。


言葉にし辛いが、自分はこの作品を読んでて「異国語の音楽聞いてるみたいだな」と感じた。
歌詞が理解できないから感覚にすべてを委ねる聴き方をするかの如く、
それ故に深くまで読み取れそうで、掴みきれない。
作品を通して何を感じるかってのを、とにかく全て読み手に任せてくれているような気がする。

和ものなのに異国語音楽を例えに出さざるを得なかったという意味でも、自分にとって不思議な作品だったと思う。