【感想】( ^ω^)ブーン達はマインスイーパに集められたようです

「まず、突然拉致などして、申し訳ない。非礼を詫びよう」
「君たちは、突然拉致されてどう思った?きっと驚いただろう」
「悲しんだり、悔しがったり、怒ったものもいるだろうな」

「だが、すぐには殺さないから、安心して良い」
「拷問なんてものも、私は好かないから、安心しなさい」

「君たちがここから出られるようになる条件は、二つだ」
「一つは、我々の提示する条件をクリアすること」
「もう一つは、死ぬことだ」

「君たちがゲームをし、クリアすれば君らの勝ちだ」

(*゚ー゚)それだけ?

「そうとも、単純明快だろう?」
「ああ、君たちの声はこちらにも届いているから、質問があれば受け付けよう」

从 ゚∀从ゲームをしなかったら、どうなるんだ?

「君らは、殺される」
「その部屋の中でね」

( ^ω^)じゃあ、質問ですお。やるのは、何のゲームですかお?

「そこのパソコンに出てるだろう?」




「マインスイーパだ」

( ^ω^)ブーン達はマインスイーパに集められたようです(オムライス)





通称マインスイーパ。
この作品名を聞いたことがある、読んだことがあるという人はかなり多いのではないだろうか。
未完結にも関わらず名作として数えられるほどの人気を誇り、再開してほしい作品は?と聞かれればほぼ確実にこの作品の名が上がる。
それほどまでの強烈な印象を残したこの『マインスイーパ』は、実際私の再開してほしい作品ランキングのNo.1に君臨していたりします。
3度目か4度目になろうか、今改めて読み返してみて、多くのファンが虜になったこの作品の魅力に、今回はスポットを当ててみたいと思う。

なお、今まで感想を綴ってきたどの作品も私は推すのですが、今回は未読の方にはあまりオススメできません。
なんせ未完結、それも、最高のクライマックスに差し掛かったところで止まってますから、きっとすごい消化不良になってやきもきするはずだからです。

それでも手に取っていただけるなら、この感想と合わせて楽しんでもらえたらこれ幸いです。



<以下、ネタバレという名の地雷がそこら中に埋まっているため、閲覧注意>



命がけのマインスイーパ。
そもそもマインスイーパの名前の由来は「マイン=地雷」「スイーパ=除去」という、現実にこれを行えば死ぬかもしれないなんとも物騒なものなのだが、これを本当に命がけでプレイするお話。
それが( ^ω^)ブーン達はマインスイーパに集められたようですという作品の主軸である。

コンクリートに囲まれた部屋に、主人公ブーン含めた10人は拉致される。
目の前にはパソコンが一台。立ち上げられている一つのソフト。
スピーカーから響く声から提示された条件は「マインスイーパをクリアすること」。
初級を3回、中級を3回、上級を3回、オリジナル盤を1回、それぞれクリアできれば生きて脱出することができる。
初級、中級においては一度でも失敗すればそのプレイヤーを待ち受けるのは、死。
彼らはマインスイーパをクリアし、無事に生きてこの部屋から脱出することはできるのか。
と、これが大ざっぱな話の流れなのだが……。

彼らがゲームをクリアできるのかはもちろん気になるところであるのだが、この作品が描いているのは単に勝敗だけではない。
この作品のもう一つの面白さ、それは『狂気』。
死という絶対的な恐怖と、このようなイカレた状況に突如として立たされてしまった時の、人間の変わり様を描いている。これが面白い。

最初にそれが表だって書かれ始めたのが『五人目のプレーヤー』。
プレイヤーは鬱田ドクオ。
死の危険があり、このルールの中では最もリスクがある「中級」の盤面を選択し、それをいとも容易く攻略していくのだが……。


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(;^ω^)(何だお?この笑顔は)

('∀`)ニヤニヤ

残っているのは中央下の方のマスのみ。
残り1マス。
旗は残り0、つまり全ての地雷の上に旗を置いたことになる。

('∀`)ニヤニヤニヤニヤ

('∀`)ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ
   ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ
   ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ

彼の笑みが、消えない。
クリアを目前にした喜びでは無い、別の笑みが、ずっと貼り付いている。
黒く長い前髪から見える笑顔は、狂った人間のものだった。

(;^ω^)(精神安定剤を飲めば……いや、そんなことに気は回らないかお)

(;^ω^)(無理矢理にでも、飲ませておけば良かったお)

(;^ω^)(これじゃあ、クリアできてもドクオさんの精神は壊れてしまうお!)

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中略

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踏めるように。
地雷を踏んで、失敗できるように。
失敗して、死ねるように。


('∀`)(思い出した!俺は!そうか!俺は!!!!)


カチッ

そして彼は、旗が消えたところ――地雷がある所を、左クリックした。
現れるのは、当たり前だが、地雷。


('∀`)生きててもしょうがないんだ!

地雷。



地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷
地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷
地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷地雷

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ドクオは自殺する。
顔を綻ばせながら、声高に人生を投げ捨て、勢いよく地雷を踏み潰す。
このシーンは最初に読んだときからものすごく印象に残ってます。
他の読者もまさか自殺者が出るとは思わなかったんじゃないでしょうか。
「精神が殺される」と言いますか、それがこの上なく秀逸に描けている名シーンだと思います。


『ゲームをプレイ中のプレイヤー以外は喋ってはいけない』というルールが、この狂気を作る上で最高の仕事をしていると思いますね。
ドクオの狂気を止める者は誰もいない。止めたくても止められない。
更には対戦相手もマインスイーパというゲームの特性上、コンピューターとなる。
人間が狂気に陥れられる状況の一つ、「孤独」の御膳立てがきっちりと整えられている。
普通は「皆で協力してここから脱出しよう!」という流れになるところを、設定がきっちりと妨害している。
プレイヤーは単独行動が可能になり、自殺という逃げ道も容易に選択できるようになっている。
最高の演出だと思います。


そして、逃げ道だけじゃない。
単独行動を容易にする孤独は孤立と言い換えてもいい。
裏切りという形を形成して、主人公ブーンの心を抉る。

『七人目のプレーヤー』では、初級の盤面に挑むはずだったジョルジュが、死ぬリスクのない上級の盤面に独断で変更する。
自分可愛さに保身に走った行動は明らかな裏切り行為。
さらに『九人目のプレーヤー』ではペニサスが、『卑怯者』ではしぃが裏切りを見せる。

他人を信じても自分が痛い目に遭うだけと気が付いたブーンは、いつしか人を信じることを止めてしまう。
「最初から周りは裏切り者と裏切り者予備軍だけだったのだ」なんて思考まで沸いてしまうほど、たった半日でブーンは間違った方向へ成長する。
下の引用は『インターバル・3rd』から。


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今までは、プレイヤー達の騙し合いはジョルジュの時から始まったのだと思っていた。
その実、一巡目の一人目ハインさんのプレイの時から、僕は騙されていたのだ。
僕の認識は甘すぎたのかも知れない。

僕は裏切らなかった。
クーさんは裏切らなかった。だから死んだ
シィは裏切った。
ジョルジュも裏切った
ペニサスだって裏切った。
ハインさんは裏切ったらしい。
ドクオさんは自殺という形で裏切った
モナーさんもほとんど自殺みたいなものだったので、裏切ったに等しい
ショボン君は物わかりが良すぎて怖い
モララーさんは貢献しすぎていて怖い

まともじゃない考えが混ざっていることは承知だ。
でも、まわりの人間を信じたくなかった。
信じると裏切られるから。

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ここで一番怖いなと感じたのは、皆のためを想って中級に挑んだモナーまでもが、裏切り者に数えられていること。
ゾクっとしましたね。
ここまで捻じ曲がった考え方ができてしまうのかと。
そして裏切り者に関しては既に呼び捨てになっている。


裏切りのため用意された盤面が登場しなければ、ブーンはここまでズタボロにならなかったのかなと思います。
そういう意味で上級とオリジナルの存在は非常に面白い。
特にオリジナルの特性を活かした裏切り方は、よく考え付いたものだなと称賛したいくらいです。
逆にこれがなければただマインスイーパするだけの作品で終わってたでしょうね。


あとは終盤のモララーの狂い方。
これも見事でした。見てらんない程に。
思えば「精神安定剤」という小道具は、このモララーのシーンを描くために、クーに持たせたのかもしれませんね。
簡素な文章でも思わずその部屋の臭気にむせ返ってしまう錯覚に陥る程、憫然たる情景が伝わってきました。


ブーンの心情の変化、周りの人間の思考や思惑、人が狂気に憑りつかれる様。
そういったものを全体を通して上手く散りばめて書かれた、不朽の名作だと私は総評します。
惜しむらくは未完結であることなのだが……。
ま、どんなエンドになるのか自分で想像してみるのも一興としてみれば、それはそれで楽しいかもしれませんね。

ちなみにやっぱり、この作品はマインスイーパというゲームを知っていたほうがより楽しめると思います。
やってみると面白いもんですよ~。
私も一時期ハマってしまいまして、5・38・161までスコアを伸ばしました。ま、ブーン以下の実力ですが……。
この記事を読まれてる方には是非お手元のパソコンで遊んでもらいたいです!

但し……、あなたがマインスイーパを始めて、そのせいでコンクリート部屋に拉致されたとしても、私は何の責任も負いませんから、そのつもりで。