【感想】( ^ω^)文戟のブーンのようです(第五回品評会)




( ^ω^)文戟のブーンのようです[4ページ目]より
ブーン系小説創作板(ファイナル)



株式会社「平成ドラゴン術」のようです


戦闘描写がとてつもなく上手い。
過去のバトルもの名作と比べても全く遜色ない、シリアルキラーとタメ張れるレベルの飲み込みやすさだったと思います。
想像力に乏しい私でも一回読むだけで十分情景が思い起こされた。


設定がしっかりしていると思う。
短い話の中に「騎龍術」「騎龍剣」とその使い方まで、短編で終わらせるには贅沢なほどの設定を出し、見事にそれを使い切っている。
特にドラゴンの代わりにバイクを駆り、オーガ二体を瞬殺するところなどは爽快感を覚えるほど気持ちよかった。


>そして更に同時に、騎龍剣をバイク後部の荷台の固定具の隙間に差し込むと、てこの原理を用いて、左手で押さえながら強く固定した。

>これにより、バイク一台と人間一人の重量がバイクの速度に乗り、そしてさらにそれら全てが、剣の刃の部分だけに乗る事になる。


本来の騎龍術よろしくドラゴンに乗って戦えればそれが理想だが、その理想を塗りつぶすほどの格好いい応用の仕方。
バイクに乗ることでしかできない戦術をしかし本来の騎龍剣の使い方に倣って戦うこのシーンが厨二心を擽る。たまらなく好きです。



展開力も申し分ない。
実力をある程度見せつけ、逆境、からのどんでん返し。
ピンチと打開、劣勢攻勢を繰り返すことで読者を飽きさせない。
その中でアツさを維持したのがキャラクタの良さだ。
逃げたと思えばすぐさま引き返してきて、開口一番「増木ッ!無事だろうなッ!」
絶望的状況の中叫ぶのはやはり仲間への言葉。
ハインがすっごい主人公主人公してた。


戦闘シーンだけでなく、日常パートも大変良かった。
話を運ぶだけの単純なものではなく、キャラを、特にミセリを遊ぶに遊ばせた結果か、
戦闘が始まる頃には大分濃度の濃いものとして読者にそのキャラクタの印象を固めさせている。

この作品は、お話を進めているのがハインで、空気を作っているのがミセリ、という感じがする。
故にミセリはこの作品の肝だ。
ミセリをただの「実はドラゴンでした」で終わらせなかった表情豊かな遊びが、私の好きにドストライクだったと、そういうことなのかもしれない。



>∩ミセ;゚Д゚)リ∩「アッー!言っちゃったなこの人!」

>∩从;゚Д从∩「わぁっー!正解だと!?驚いた!!」


この諸手上げてリアクション取る応酬が見返してもクスッときてすごく好き。



全体通してすべての描写が丁寧で、しかし説明はスッキリしていて、遊びもあり、アツくなれる。
読み切りで終わらせるにはもったいなく、贅沢で、大満足な作品でした。





エンテレケイアの獣どものようです


読み返すのにかーなーり気合がいる作品。
そういえば自分は何日も風呂に入ってなかったんじゃないか、全身から生ごみの腐臭が漂ってくる……
読むだけでそんな不清潔感を味わうことができました。
できれば読み返したくないとすら思います。


終盤の日本兵が巣食われていたシーン、
「なんてことはない」「ただそれだけのことだ」
目の前で起こっている非現実的な光景を冷静に型に当てはめようと努めるところがかえって気狂いに見えてしまう。
どこまでも俯瞰的に語ろうとするあまり自分が自分じゃなくなっていることに気付いていない。
狂気の演出という面で一人称視点なのが抜群に効いてる。


「すくう」というお題に命名という形で応えてきたのは
予想外かつ新しく、一方で初読の際にはどうしてもこじつけを感じてしまったことは否めない。
が、この「ス=クゥ」という生物にAAをつけて喋らせたのが、なによりブーン系という特性を生かしたものだったと後から思う。

この獣を紹介する描写にもあった通り、黒髪と眼だけは人間のような造りをしていて、それが妙に気持ち悪い。
この気持ち悪さを例えるなら、自動的に眼が大きくキラキラと加工された、男が被写体のプリクラ。
人間の形をしているが人間ではありえない顔、そんな顔が写真の向こうで口だけを動かしてしゃべりかけてくる、そんな違和感と不快感。

この作品ではその不快感を、「獣にわざわざ顔を付けて鳴かせる」という演出で与えてくる。
普段ブーン系を読むにあたって無意識に刷り込まれたテンプレAAの「人」という成分を、「ス=クゥ」という獣からいやでも感じさせられる。
そんな訳でこのアイデアをねじ込んできたのは大成功だったといえるはずだ。



ひとつ気になったのが


>(´<_` ;)「あの時、族長の息子が言っていた言葉の意味だッ!」

>(;゚_L゚)「――******かッ!?」

>(´<_` ;)「そうだッ!」

>(;゚_L゚)「奴らの言葉で――」

>(;゚_L゚)「――"愛しています"  だ」

>(´<_` ;)「……」


このあの時っていうのが屠殺のシーンだったなら、そのとき通訳は同行してなかったのでは?というところ。
ちょっとモヤモヤしてしまいました。


序盤から不快感全力疾走のままゴールを突き抜けていったので、
総評としては、「面白いけどあんまり読み返したくない」。
ただし良作というのに違いはないです。
いやぁすさまじかった。