【感想】( ^ω^)文戟のブーンのようです(第三回品評会)




( ^ω^)文戟のブーンのようです[2ページ目]より
ブーン系小説創作板(ファイナル)





('A`)のヘソは名産地のようです

まずこの短いお話の中にギュッと濃縮された(そうスイカのように)言葉選びのセンスと情景描写に膝をつかなきゃいけない。
「機が、実が、熟すのを待てばいい。」「冷や汗に感化されている。冷や汗と、伝う果汁に。」
部分だけじゃなく全体が、一文一文の軽やかさがとても心地いい。そしてそれが状況と相まってときに和やかに、ときに静かに恐怖を煽る。

>ふと、底が抜けた。甘い蜜が、掘った穴の向こう、新聞紙を濡らすのが見える。

この時点で既に状況がおかしいことに気が付くはず。
しかしこれを何でもないことのようにスルーして続くもんだから「え?え?」と戸惑ってしまう。これも計算の内なんだろう。
静かに始まっていく狂気は読み進めるうちに自然と自身のヘソを中心に気持ちの悪いものを渦巻まかせていく。
そうして自分、最近スイカ食ったっけ?なんて振り返る。
夏の風物詩に加えて「種を飲み込むと体内で育つ」なんて迷信があるものだから余計に怖くなってくる。

ラストシーンが怪談ドラマのオチって感じがして自然と脳内で映像化された。
全体通して魅せ方が鮮やか、よく咀嚼させ、ごくんとひと飲みさせる、素晴らしい作品。






赤き瑪瑙は喪に服すようです

物語への引き込みが抜群に上手い。
こういうお話の舞台に選ばれるのがロンドンなのはジャックザリッパーのせいなのか、しっくりくる。
雰囲気がいいって褒めるのは大雑把な感想になってしまうが、
しっくりくるように仕向けるのはやはり雰囲気のおかげで、この醸し出し方にとても配慮が行き届いてるなという印象。

冒頭の怪奇、魔術、薬草(わざわざ漢字にルビを振る書き方がいい)とか、お家の問題とか、ところどころに出てくる小物類、小難しい漢字まで。
そんな中主人公のトソンのキャラクターだけが飄々としていてどこか現代的、そのギャップが堅苦しさを緩和していて、読み手の肩をリラックスさせる。
これでもかというほど場が整っていたからこそ、ラストの展開が突飛なものとは全然感じなかった。

中盤はアリバイや証拠探し、個々人の回想と推理小説のなりをしていたが、本格的なそれには至らず、推理自体はあっさりと終わる、
これもトソンの正体の種明かしにスムーズに移行できて、よかった。
あくまで物語を読ませる。錯綜せずに伝えたい内容を伝える。作者のやりたいことが徹頭徹尾貫かれている。

読者への干渉じゃなく、なんというか、俺の読ませたい物語はこれだ!読者はただついてこい!みたいな、
それが読後の爽快に繋がっているんだと思う。
すごいものを読んでしまった……、と読後は大きく溜め息。満腹感が一味違うね。

そういえば章の見出しに「まだらの石」とあったけど、これはホームズの短編のオマージュなのかな?
他の見出しも何かしらありそうだね。






紙魚のようです

主人公の人格の乖離、分裂と表現するのも違うだろう、作中で紫色に例えられていたように、
ほとんど第三者の意識の乗っ取りとその語り、整然と並べられた文章の、しかしその内容の混濁、
そして宇宙的とでもいうような奇妙な終幕。
未知のものに対しての恐怖とは、霊的なもののそれとは違った恐怖を生み出す……、それを改めて分からせてくれた。
前作を持ち出しての評論もどうかと思うが、作者の好みの作風が今作ではかなり良くマッチしている。

読み始めはいちいち時間経過が示され、書き方もどこか事務的で単調、まるで日記のようだなと流していたが、
後から内藤の日記が見つかったところでもしかしたら意図してこういう形式にしたのかもしれないと気付いた。
つまり、この小説自体が最初から"兄者"の日記だったのでは、という。

そうして見返してみるとラスト3レス、語り手が完全に切り替わってしまったこの瞬間がこの読書中で一番ゾワゾワしたものを感じる。
もはやソイツは兄者の意思によって定義付けた"流石"でもなくなっていて、「かつて兄者だった男は一つ笑みをこぼした。」と俯瞰して話す"私"は
"者"として存在し得もしないのだろう。
一般的に神様視点で語られる地の文とは違う、確かにそこに「いる」概念とでもいうべき存在がヒトを語っている。
理解の及ばない狂愛と、理解の及ばない未知の存在、他作とは違う穿ったホラーが、恐怖という言葉以上の気持ち悪さを演出してくれた良作。






( ^ω^)は零感のようです

中盤の屋敷探索が、時間をかけて書かれているだけあって肝だなと思う。
この作品は視点移動がすごい。
背景描写が細かくなされ、ブーンが懐中電灯で照らす所作をまるで自分がそうしているかのような錯覚を見せる。
正直、小説の主人公にここまで自分をリアルタイムで同期させられたことは今までなかった。初めての経験だ。

トイレではただ懐中電灯を壁から天井に振り上げるだけの行動がこの間なんと三行分。
段階的に光を移動させていくその描写に時間をかけることで、同期させられた自己への恐怖の煽り方が尋常じゃない。
ホラーゲームさせられてるようでマジ怖かった。
建物の作りもなかなか考えられていて、右肩上がりに盛り上がっていく展開力は流石。

ただオチが、どうしても分かりやすいほどの化け物だと逆に拍子抜けというか、
やっぱりイメージのつきやすい人型のものとなると文章だけで臨場感を出すのはこれだけじゃ足りないかなと感じた。






引っ越しのようです

軽トラで移動する間の一コマの切り取り方が、いいなぁ。
パーキングの足型で遊んだり、牛をわき目に見たり、クーがドクオの腹殴ったり、
そうやって時間を経過させつつ、しかし一コマにつき一つ、なにかしらの情報や感情を読者にぽんと生ませては沈殿させていく。
終盤に差し掛かる頃にはそれらをぐるっと攪拌させて、あんなことがあった、こんなこともあったと短い物語なのに懐かしさを感じずにいられなくなる。
描写もないのに二人の間にあった過去のあれこれを補完させられてしまう。
ドクオの台詞で終わるのが憎い演出で、空を仰がずにはいられない。
好きが高じると好きしか言えなくる。かなり、好きです、この作品。

クーがドクオの横腹殴ったシーンの

> _、_
>川 ゚ -゚) 「見てないけど」

このAA好きだなぁ。
  _, _
川 ゚ -゚)  じゃなくて
 _、_
川 ゚ -゚)  なのがとてもいい。