【感想】川 ー )ローレライのようです




川 ー )ローレライのようです
ブーン系小説創作板(ファイナル) ( ^ω^)文戟のブーンのようですスレより



少年と彼女の出会った日とその翌日、この最初のシーンの切り替えが弱く、不親切に感じてしまいました。
彼女が振り向き、いざ会話が始まるかと思った矢先もう翌日になっていて、
いつのまに日を跨いだんだ?とつまづき、さもすると彼女は時間遡行者かと一瞬考えてしまった。

おそらく両日二人が話している場所が全く同じでシチュエーションが似ていたのが原因だろうか。
もうワンクッション欲しかった、あるいは単に改行を挟む等で、スムーズに時間の経過を前置きしてほしかった、と思います。




序盤にこそささいな文句をつけてしまいましたが、物語の時間の流れを二人の、
特にドクオの成長で表したその書き方、その中身については、メリハリが効いていてとてもよかった。
ドクオが中学生になってからは彼女の呼び方が「おねーさん」から「お姉さん」に変わり、
二人の制服が進級によって一新し、彼女の髪が伸び……。

具体性を伴う表現を見せながらも、しかしどのくらいの月日が流れたのかは「季節がまた巡って」「この数年で」とぼかしてくる。
このぼかしが後の文章をひと際立たせる。




>どんなに口が渇いていても、心臓が潰れるほど痛くても、その言葉だけは容易く出てきた。
>半ば無意識にお姉さんの腕を掴む。上目遣いで見られたとき、いつの間にか背丈を越していたことに気付いた。




それまで消極的だったドクオが「男」へ成長し、彼女の身長さえ越してしまった彼はもはや
空にとっても読者にとっても「少年」ではなくなったことに、ここで初めてハッと気づかせる。

この文を読んだとき鮮明に情景が目の奥に焼き付いて、頭の中が冴え渡った。
「なんつういい文章書くんや……」とマジに思い、そのときだけでこの文章3回読み直した。ほんとに。
ほんとにいいもの見せてもらった。



最後にタイトルを出したのがまたいろいろな想像を掻き立てる。
wikiを見れば空のモデルがある伝説からとられたことがわかるだろう。
岩山に佇む妖精の乙女は眼下の川を船で渡る漁師をその声で魅了する。
生前の乙女は不実な恋人に絶望して川に身を投げたという。


もし、ドクオがこの伝説を過去の思い出と照らし合わせているとするならば、
ただただ縛られ続け、美しい風景として心に閉じ込めておく理由の奥底には、
現実を直視したときその思い出のすべてが幻に風化していくのを恐れているから……そんな恐怖が見え隠れするような……。