【感想】( ^ω^)無題(゚、゚トソン(掃除機の話)

部屋の掃除機が孕んだので、昔産婆をしていた祖母を呼んだ。

( ^ω^)無題(゚、゚トソン(玉兎の夢)






どうも、久しぶりの更新です。
自分から募集した手前やっぱり依頼には応えていきたいし、何より読む気になりますね。
というわけで、今回はこの作品。短編、通称『掃除機の話』。

実は私も「掃除機が孕む短編がある」ということは総合なんかでちらほら目にしていたのですが、実際に読んだことはなかったんですよね。
いい機会なので、この度やっと読むことが出来ました。しかも短いからサラサラッと。

しかし……う~ん確かに、「なんかよくわからんけどおもしろい」という感想が第一に出てくるお話でしたね。
だって掃除機が孕むんですよ。
世界観からして突拍子無く不思議です。
しかもその、電化製品が孕むことなんて当たり前だとでもいったふうに話は進行していく。
後に残るは、「これでよかったのか」「でも、仕方ないよな」そう主人公のブーンに同情せざるをえない、六畳一間の何もないアパートの一室でぽつんと一人立ち尽くしているような、そんな寂寥感。

掃除機、電化製品という無機質なものに、生き物特有の妊娠という現象を当てはめてみるという、実験的なアイデアを日常の一部に組み込んで書かれた、ふっと寂しくなるような、もの静かな作品でした。



<以下、本作品8レスしかないけど、それでも一応ネタバレ注意>



掃除機が孕んだ。
このお話を読み始めると、ブーンとトソンがこの現象に対して、そんなに焦ってないのが分かる。
トソンなんて、事前に御産のための布きれいっぱい詰めたバックなんて持ってきてるくらいだし。
まあ、ブーンはそれまで電化製品も妊娠するのだということは知らなかったみたいだが。

それに……、洗濯機ならよかったのに、みたいなことも言ってしまう。
常識なのか、経験があるのか、その両方なのか、とにかくこの世界では電化製品が孕むことはさほど珍しいことではないらしい。

トソンは部屋にある掃除機を見るなり、そこに問題のものがあるのが分かっているようで、本体の蓋を遠慮なしに開ける。


>(゚、゚トソン「ああ、育っちまってる。お前、掃除機、甘やかしたね」


掃除機を甘やかす。
聞き慣れない言葉に「へぇ」と頷きました。
まるで生き物と同じ扱いでものを言うばあちゃんだ。
そして他にもこういった、掃除機は生きているのだと思わせる文がいくつもある。

硝子が柔らかくなるほど恋い焦がれたのだ、とか、掃除機はみんな女だ、とか、いまどき人間に恋する掃除機なんて、だとか、他にも。
短い話の中で、結構設定がしっかりしている。
自然と世界観に馴染ませ、そういうものなんだと思わせる力が強い。


ブーンは掃除機の、硝子の子を降ろす決断をする。
そして公園にてガラス片を吸いこんだ時の事を思い返す。


>掃除機に、面倒をかけてすまないね、と、声をかけてやったかもしれない。


ここで思ったのだが、ブーンは、掃除機に対する愛が少し強かったのかもしれない。
田舎から持ってきて、しかも週に4~5回使っていたその掃除機に、特別な感情まではなかったかもしれないが、声をかけてやるくらいには、"ただの物"として扱ってはいなかったのかも。

考えてみるとこの声かけがいけなかったのか。
純粋な優しさを受け取ってしまった掃除機が、ブーンの悲しみの雫が染みたガラス片と相まって、特別な感情を抱いてしまったのかもしれない。
つまり、やっぱり掃除機はブーンに恋をしたのだ。
憶測に過ぎないが、ブーンの失恋によってぽっかりと空いた心の穴を、掃除機が埋めようとしたのかも。

子を降ろされる時掃除機があっさりと引き下がったのは、「やっぱり私では代わりにはなれないか」と、出過ぎた真似をしてしまったかなと思ったのではないか。

そんなことだから、ブーンは赤白いガラス片を見せてもらったとき、これ以上情が移ってしまわないようにと、トソンからの「もう取り換えた方がいい」という言葉に、素直に頷いたのではないか。

「そうかもしれない」という返事もどこか心ここに在らずといったふうで、あっという間に終わってしまった一連の出来事とすぐそこにある掃除機に、心残りと寂しさを感じているような。
そういう、ブーンの心情を読み手それぞれが予想できるような、静かな幕引きはこのお話の最後にとても相応しかったと言えるのではないだろうか。


>笑い話にもならないが、
>僕が失恋して、掃除機が孕んだ。
>それを祖母に、堕ろしてもらった。


本当にそれだけの話なんだが、「なんかよくわからんけどおもしろい」といわしめ、評価を受けるだけの何かが、やはりこの作品にはあるのだろう。

『大切に使った物には魂が宿る』なんて事を聞いたことがあるが、まさしくそれを感じさせ、本当に物にも魂があり、子供を孕むことだってあるのかもと思わせてくれてしまう、そんな作品でした。
大変面白かったです。


……いやしかし、電子レンジの話もあれば扇風機の話もあり、掃除機の話だってある。
ブーン系民、電化製品好きすぎでしょ。