▼・ェ・▼その男、所詮、『犬』のようです。 第2話 天使 中編其の一

285 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:03:16 ID:q7v0AJSc0

(>< )


『僕』がいる。


(>< )


無限に広がる暗闇に、『僕』がいる。

偉大なる父のモニュメントを背に置いて、虹色のステンドグラスから漏れる七色の光を、まるで後光みたいにして纏う、『僕』がいる。

でもその僕っていうのは、『本当の僕』じゃないっていうのは、いくら僕でも分かってるんです。



( ><)(>< )


まるで、鏡。

286 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:05:47 ID:q7v0AJSc0
姿形は全く同じなのに、その奥に隠れている瞳に写らない、とっても大切なものはプラスチックみたいに冷たくて、そして、空洞なのが見てすぐに分かった。

何でそんな事が見ただけで分かったのか?
って聞かれたら、やっぱり「わかんないんです」って答えちゃうけど、それでもやっぱり、僕には分かる。
僕の事だから、『僕じゃない僕』の事もすぐに分かるんです。

でも、『僕じゃない僕』が、一体何者なのかはやっぱり馬鹿な僕には、わかんないんです。


(>< )


僕がいる。


ちっぽけな虹みたいな光。
でもそれでいて、この無限に続くような暗闇にとっては、とってもとっても眩しい七色の光の下に。

287 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:08:23 ID:q7v0AJSc0
磔刑に処せられ、顔を伏せる我らが父の足元に、まるで、幽霊みたいな『僕』がいる。


( ><)「ねえ、どうして君は、そんなに冷たい顔をしているんですか?」


勇気を出して僕が尋ねてみても、『僕じゃない僕』は、口を閉じたまま、僕の方をじぃっと見つめるだけ。
結局、僕が何を言っても応えてはくれない。
寂しいし、何よりも少しだけ、恐かった。



暗闇にぼんやりと浮かぶ、我らが父の姿。

キラキラと輝く、虹色の幻想。

それから、簡素な作りの真っ白な修道服に身を包む僕。

そして、対照的な真っ黒なローブに身を包んだ、『冷たい僕』。

288 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:11:33 ID:q7v0AJSc0
僕は右手をゆっくりと伸ばして、恐る恐る目の前の『僕じゃない僕』の頬に触れる。
僕じゃない筈の、目の前の『僕』の身体は、やっぱり僕自身とは全く違くて、とっても冷たい。
それから、痛かった。

触れただけなのに、僕の心の中の、何か大事なものがキリキリと締め付けられるようで、とっても痛かった。
右手越しに伝わる、その手触りも、無機質な冷たさも。
それから1番大切な、触れているだけで底冷えする、何か言葉では言い表せない、ココロそのものみたいな、鼓動が伝わらなくて。

だから、『目の前の僕』っていうのは、まるで死体のように感じられて、僕は知らず知らずの内に涙を流していました。

289 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:12:20 ID:q7v0AJSc0
その涙が、同情の涙なのか。それとも、キリキリと締め付けられる僕の心の奥が悲鳴を上げているからなのか。
それすら分からなかったけれど、気が付いたら涙が止まらなかった。


気が付くと、目の前の『僕じゃない僕』の瞳からもスーっと涙が流れていました。


でも、その涙は僕なんかのソレとは全く違かったんです。


(。><)「あ……」


『僕じゃない僕』の瞳から音もなく零れ落ちていく、真っ赤に染まった涙の雫。
それは、ずーっと昔に僕が見た、赤い赤い、とっても悲しい奇跡の涙。

290 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:14:02 ID:q7v0AJSc0
奥に浮かぶ父の瞳からも。
それから、露出した脇腹にある聖なる傷痕からも、赤いソレがどんどんどんどんと流れていく。


(。><)「あ……あ……」


僕が動く。
違う。僕じゃない。


『僕じゃない僕』の身体が、微かに動いた。
痙攣するように身体を震わせ、無表情だったその瞳に、光が宿る。

291 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:16:11 ID:q7v0AJSc0
『僕』の身体はやがて、ミチミチと肉を裂くような、とっても痛々しい音を立てながら、その姿を徐々に変えていく。
すっかり怯えきった僕を嘲笑うかのように、『僕』がほんの少しだけ笑った気がした。
そして、肩の辺りがまるで爆発でもするかのようにボコッと膨らんだ時、それは生まれていたんです。



(。><)「あ……」


バサッと何かが翻る音がした。

そして、純白の、白い羽が僕の目の前のにふわふわと揺れ動きながら落ちていく。

292 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:17:32 ID:q7v0AJSc0
気が付くいた時には、暗闇には何十何百といった純白の羽が、まるで雪のように舞い落ちていたんです。
そして、その中心には、優しく微笑む『僕』の姿が。


(。><)「天使……?」


『僕じゃない僕』からは、とても大きな翼が姿を現していたのです。
聖書を詠みながら何度も何度も想像していた、純白で美しく。穢れ無き、無垢なる天使の象徴。

『僕』の背に雄大に広がる、その翼を見た時、そして、そっと微笑みかける『僕』の表情を見た時。
僕は心の底から救われた気がしました。

293 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:18:14 ID:q7v0AJSc0







――――だけど、それだけじゃなかった。







.

294 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:19:19 ID:q7v0AJSc0
(。><)「あ……あ……!」


『僕』の右肩からから生えている美しい白い翼。
その姿は、誰がどう見ようと天使そのものに写る事でしょう。


(;。><)「な……んで……?」


『僕』は微笑んでいました。
右に天使の翼を広げて。

そして、左に獣の翼を広げて。

295 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:20:19 ID:q7v0AJSc0
(;><)「ち……がう……ちがうんです……」


『僕』の左肩から生えているソレは、獣のような短くて黒っぽい体毛にビッチリと覆われていて、ところどころ、血と、骨とが露出していました。
まるでボロボロのローブから穴っぽこが空いて、チラホラと中が見え隠れするようです。
翼の先には何か、牙や爪みたいなものがギラギラと輝いていて、その輝きはとてもじゃないけど神聖なものではありません。
邪悪、そのものが閉じ込められたような翼の象徴。


まるで、それは。
僕が昔に、ほんの一瞬だけ想像した……


(;><)「悪魔……?」

296 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:22:18 ID:q7v0AJSc0
瞬間、全てを焼き払うような巨大な雷が轟いたんです。
稲妻はまるで悲鳴のような唸りを上げて、宙に浮かぶ父の首を焼き払う。
目も眩むようなその閃光は、ステンドグラスの虹色の輝きすら音を立てて粉々に弾き飛ばしてしまった。


(;><)「あ……あ……!」




(><* )


『僕』がいる。
天使と悪魔の翼を持ち、静かに微笑みかける『僕じゃない僕』がいる。

暗闇にはもう、愛しき父の姿も、七色に輝くステンドグラスも何もない。


(;><)(><* )


僕と『僕』だけだ。

297 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:23:05 ID:q7v0AJSc0
僕は『僕』の視線に堪えきれなくて、いつの間にか小さく震えていた。

身体が寒くて寒くて、仕方が無くて。
心の中が痛くて痛くて、仕方が無くて。

それに、僕は『僕』が恐くて恐くて、仕方が無かったから。




何が?


僕は、『僕』の何が、怖いの?




……わかんないんです。

298 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:23:59 ID:q7v0AJSc0







―――だって『僕』は僕自身じゃないんですか?






.

299 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:24:51 ID:q7v0AJSc0
(><* )「――――。」


『僕』が僕に優しく微笑みかけながら、語り出す。
その言葉は天恵のように神聖で、それでいて誘惑のように甘い。
『僕』の視線が、僕に訴える。
僕の身体を暖かい何かが包みこんで、それと同時に冷たい何かが僕の心を蝕んでいく。


(><* )「――――。」


違う。それは僕じゃない。
それは僕じゃなくて『僕』なんだ。

300 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:25:55 ID:q7v0AJSc0
(><* )「――――。」


僕は『僕』じゃない!
『僕』が僕自身だと笑いかけても、それは違う。絶対に違う!


(><* )「――――。」


天使、誘惑、悪魔、天恵、違う、僕が、『僕』だから、違う、違う、違う、獣の、神の、父の定め、違う、僕は、天使、違う、悪魔、違う、違う、裁き、違う。

301 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:27:55 ID:q7v0AJSc0
「――――。」

(;><)「違う!」

(><* )「――――。」

(;><)「違うんです!!」

(><* )「――――。」

(# ><)「違うってば!!」

(><* )「――――。」

(# ><)「違うのおお!!」

(><* )「――――。」

(#   )「あああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ!!」

302 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:28:51 ID:q7v0AJSc0
叫びました。
気が付いたら僕は目の前にいる、僕の形をした『化物』の首に手を掛け、無我夢中で暗闇の中に押し倒していました。
天使のような微笑みを浮かべ、悪魔の誘惑を語り掛ける憎き『僕』の胸元に狙いを定めます。
右手に巻いたロザリオを、何度も何度もつっかえながらも必死で左手で引きちぎるようにほどいて構え、十字架の部分をナイフに見立てて思いっきり振りかぶり。


(# ><)「ちがあああああああああああああああああああああああああああああああああああう!!」


そして、力いっぱい突き刺しました。

303 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:30:27 ID:q7v0AJSc0
( ∀  )「――――」


その瞬間、胸元に十字架が刺さった『彼』は。
口が裂ける程の醜悪な笑みを作り、牙を剥き出しにして。



( ∀  )「――れ――は――前―身の願――うなんだよ」


と言った違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!

304 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:32:00 ID:q7v0AJSc0
(# ><)「違う違う違う違うちがあああああああう!!」


暗闇に浮かぶ、七色の破片。
首を失った、無惨な父の象徴。

それから、笑顔のまま、死んだ。
翼の生えた『僕』。


( ><)


それから、血まみれの、僕。

305 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:34:54 ID:q7v0AJSc0
(#   )「僕はあああ!!」


暗闇に、祈った。
泣き叫びながら、祈った。
答えなんて知っている。
これが僕の定めで、天恵なんだって事も。
僕は神の子で、父のためにもそうしなきゃいけない事も。


(#  ;)「僕はあああああぁぁぁぁ!!」


それでも、叫ばずにはいられなかった。
声が枯れるまで叫ばずにいられなかった。
もし、僕が泣き叫ぶ事すら赦されないというなら、父はどうして僕にこのような受難を与えたというのか。

僕は、僕は、僕は。

306 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:36:39 ID:q7v0AJSc0
(# ;;)「僕は悪魔なんかじゃないいいいいいいいいいいいい!!」


流した涙は、広がり、湖になり、やがて鏡になりました。
そこに映っていたのは、顔をぐじゃぐじゃにした僕。

右の背には純白の翼を携えた僕。
左の背には血濡れた獣の翼を携えた僕。


それから




( <●><(# ;;)



黒い、瞳の、彼が。

307 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:37:52 ID:q7v0AJSc0







―――ねえ、お父さん。僕は一体、誰なんですか?







.

308 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:39:20 ID:q7v0AJSc0

そうして、彼は。


( <●><●>)


すぅっと、近付いて。


( <●><●>)


僕の『右頬』に。


( <●><●>)


優しく、優しく……

.

309 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:41:51 ID:q7v0AJSc0
( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)(  ∀ )( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)( <●><●>)

310 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 00:42:37 ID:q7v0AJSc0







―――――――――――――――――







.

311 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:14:42 ID:q7v0AJSc0
大きな木製扉の両脇に、2人の女性が門番のように立っていた。

向かって右側の白人の女性は直立不動という言葉がぴったりで、呼吸によってわずかに上下する胸元を見なければ、新手の現代彫刻かと疑いたくなるほど、一切の動きも無く、それでいて美しい。

対して左側に立つ女の肌は黒く、その体勢はすでに壁によりかかっており、表情からは退屈が見てとれる。
先の女性の魅力が神秘的なものとするならば、こちらの女の魅力は健康的なエロスとワイルドさと言ったところだろうか。


ノパ⊿゚)「なあ」


黒人の女、ヒートが小さく口を開く。
その口の右端には、火のついていない葉巻が咥えられているにも関わらず、器用に語りかける。

312 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:16:08 ID:q7v0AJSc0
ノパ⊿゚)「結局よお、親父はまだ籠もってやがんのか?」

川 ゚ -゚)「ああ」


白人の女、クールがぴしっと直立した状態のまま肯定する。
ヒートの方をチラと覗く事もなく、表情も、顔の向きも、一切ぶれる事はなかった。


川 ゚ -゚)「まだ、考え込んでいらっしゃるようだな」


姉のその言葉に、ヒートは舌打ちをしながら顔をしかめた。
口に咥えたコイーバを右手で弄びながら、やってらんねえとばかりに溜め息をつく。
そして先程よりもさらに体勢をだらしなく崩すと、両腕を頭の後ろに組み枕代わりにするように再び壁に寄りかかった。

313 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:40:30 ID:q7v0AJSc0
一瞬、クールの冷たい視線を感じたヒートだったが、殆ど物心ついた時からの付き合いである『義姉』のお堅い思考にはすっかり慣れていた彼女はあえて無視をした。

堅い思考や回りくどい事は苦手だ。
考えるくらいなら動いた方が早いし、理屈っぽいのは馬鹿な自分にはどうにも合わない。

リシャール・ニダーの『左目』と称される『ラーセン・ヒート』という人間は非常に短絡的な人間だった。


髪は赤く全体的に短いが、前髪の一部から右側頭部にかけてはアシンメトリーを描くように長く、中途半端に伸びた後ろ髪は、いわゆるポニーテールという形で後ろの方で縛っている。

314 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:41:20 ID:q7v0AJSc0
つい1週間ほど前に、酔った勢いでセルフカットした結果、この奇妙な髪型に落ち着いたのだ。
ちなみに姉妹からは散々からかわれたが、ヒート自身は結構気に入っているのため、しばらくカットする予定は無い。

顔立ちは整っており、瞳は切れ長でまるで虎のようにギラギラと輝く瞳は、本人の肌の色との対比でエキゾチックな魅力を存分に引き出している。
鼻も高く、その唇は黒人らしくぷっくりと膨らんでおり、ふとした時に見えるその犬歯はまるで牙のように鋭いものだから、そのワイルドでありながらどこか官能的な魅力も存分に引き出しているのだろう。

315 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:42:23 ID:q7v0AJSc0
背は高く、筋肉質で大柄。
服装はところどころに破れや解れが目立つ飾り気の無い、ボルドー色のつなぎ。
背中にはデカデカとイエローモンキーと書かれた英字のロゴと、ポップなタッチで描かれた大きな猿が水着の美女を食い殺すというショッキングなイラストが描かれている。

両腕の部分は7分のところで引きちぎられたかのように乱雑に裁断されており、露出した黒い肌からはトライバル模様のタトゥーが至るところに彫られている。

そして、何と言っても目立つ彼女の胸元を押し上げるように主張するウォーターメロンボールは、どうしてもつなぎに収まりきらないようで、ジッパーは腰元までしか閉じておらず、胸元は白いサラシで乱雑にぐるぐる巻きにされていた。

316 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:44:12 ID:q7v0AJSc0
ノパ⊿゚)y‐「考えたってよ、どうしようもならねーじゃねえかよ。もう、とうの昔に他人になった人間なんだからよ」

川# ゚ -゚)「おい」


『義妹』の拗ねたようなその言葉に『右目』と呼ばれる『ヘネシー・クール』が始めてヒートの方をしっかりと向いて怒気を孕んだ抗議の声をあげる。


外見から判断するに、ヒートとは何もかもが対照的な彼女だが、それは内面にも言える事だった。
粗暴で喧嘩っ早い(悪く言うならば、馬鹿)のヒートの面倒を幼い頃から見ていたクールは、幼少期から、常に冷静沈着で、しっかりと計画や計算をしてから物事にとりかかる人間だった。

317 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:44:55 ID:q7v0AJSc0
ヒートとは対照的な陶磁器のように白い肌を持つ彼女の美しさは神話に出てくる天使や女神を思わせた。
髪はセミロングでその色はしっかりと染色された艶のある黒。
瞳は青く、アーモンドのように大きく、魅力的だ。
高い鼻筋に、桜色の唇は彼女の白い肌に絶妙にマッチングしている。

清楚な白いシャツブラウスに、黒いパンツスーツに身をつつむ彼女の姿。
それはマフィアやギャングと言うよりも、SPや警察関係者と言った方がどこかしっくりとくるだろう。

318 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:47:40 ID:q7v0AJSc0
一見、フォーマルな装いに身を包んだ地味めな服装の彼女だが、強いて目立つ所があるとするならば、ジャケットの胸ポケットの部分に小さく英字で刺繍されている金色のロゴマークだろう。
「イエローモンキー」と縫われたそれは、控え目ながらも、彼女が北を征するニダーの子飼いである証としてしっかりと主張している。

足元はポピュラーな黒い革靴。
そしてパンツに隠れたくるぶしの辺りにホルスター。
両足にあるので、計2丁の拳銃を隠し持っている事となる。
もっとも、念には念を入れて装備しているだけで、グループ1の実力を誇る彼女が使った事は今まで1度も無かったのだが。

319 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:49:21 ID:q7v0AJSc0
背は女性にしては高めだが、常にヒートと並んで行動しているため、特別高くは見えない(ヒートは180センチ、クールは168センチ)。
体型はモデルのように細いが、その身体は数多くの修羅場で鍛えられた、しなやかな筋肉が全身を被っており、彼女もまたソウサクシティに根付く戦士の1人であることの証のようでもあった。


川# ゚ -゚)「ヒート。お前にもお父様の苦悩は分かるだろうが。お父様はつい先日、愛する息子を亡くしたばかりなんだぞ?」

ノハー⊿゚)y‐「そりゃあ、よお。俺だってシナーの兄貴は好きだったぜ?
親父と比べりゃあアホみてーだったけど、それでも歴としたファミリーの一員には変わりねー」

320 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:51:27 ID:q7v0AJSc0
ノハー⊿゚)y‐「でもよ、兄貴は……シナーの奴はもう『イエローモンキー』からとっくに離れた人間だぜ? そんなやつのために親父が塞ぎ込んじまったらよお」

ノハ;ー⊿ー)y‐「俺ら、ファミリーは、どうすりゃいいんだよ……」


ヒートは珍しく弱気な表情をクールに見せたあと、バツが悪そうに顔を伏せた。


川 ゚ -゚)「……」


クールの表情からわずかに戸惑いの色が見えた。
彼女は『義父』であるニダーと同じくらい、この愚直なまでに素直な妹を愛しているのだから。

321 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:52:45 ID:q7v0AJSc0






( `ハ´)


チャイニーズマフィア、ドラゴンの首領だったシナーは約8年までニダーのファミリーの一員として『イエローモンキー』に所属していた。

お調子者で、おおよそ裏の世界ではやっていけそうも無い程に気の弱いシナー。
太っちょでノロマ、要領もあまり良くない。
上司の使いっぱしりにされ、散々馬鹿にされてきた彼だったが、ある1点に関しては他の追随を許さぬ程の天才的な実力を持っていた。


それが、拳銃の腕だ。

.

322 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:53:54 ID:q7v0AJSc0
当時ソウサクシティに普及していた一般的な小形拳銃ではどんな凄腕のガンマンでも約50メーター以上の距離では通用しなかったと言われる。
しかし、小太りで汗っかきなひょうきん者の中国人。
杏露・シナーはその常識を不敵な笑みと共に覆してみせた。


彼がイエローモンキーのファミリーに入団して、約半年後の出来事だった。
当時ソウサクシティの南東を支配していた『ウビィーツァ』というロシアンマフィアと、人気の無い廃工場で薬の取り引きをさはていた時の話だ。
順調に進んでいた取り引きだったが、終了する直前に潜んでいた敵に奇襲をかけられる。

つまり、ハメられたのだ。

323 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:55:33 ID:q7v0AJSc0
圧倒的な物量、そして別件によりニダーを始めとする幹部達が居ない現状。
次々と死んでいく味方達。

まさに絶望的な状況により、窮地に陥るイエローモンキーだったが、その流れをたった1人の男が見事に変えてみせた。
それが、当初下っ端としてドライバーをやっていた杏露・シナーだった。

元々臆病者だった彼は突然の襲撃に気付くと同時に全力でその場から逃亡。
一見情けなく、とても誇り高きマフィアグループ、イエローモンキーの所業とは思えない行動。

しかし、彼とてファミリーをみすみす見捨てるような薄情者では無かった。

324 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:56:35 ID:q7v0AJSc0
彼はその場から離れると廃工場の向かいにある見晴らしのいい建物の3階に隠れた。
そして当時から愛用していた、特殊な改造を施した2丁の回転式拳銃『ピースメーカー』を両手に構える。

戦場からの距離、目測、約120メーター。

小形拳銃では全く役に立たないと言われる50メートルの距離の壁の、さらに倍以上の距離。
銃に知識がある者なら総じて「無謀だ」と鼻で笑うであろう挑戦を、杏露シナーはやってのけた。
まるで、彼の中に眠っていた龍の魂を解き放つかのように。

325 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:57:44 ID:q7v0AJSc0
彼が愛用している改造済みピースメーカー2丁の装弾数は6+12で18発。
風向き、南から約3メートル。


風を裂くような乾いた銃声が唸るように響き、彼の両手から薬莢が踊るように飛び出し、閃光が弾け飛ぶ。


120メートルの無謀な距離。
龍にとって、無意味。


18発の弾丸は寸分の狂いもなく18人の眉間に命中。
奇襲をかけたにも関わらず、スナイパーに狙撃されたと慌てた敵方は総崩れ。

かくして、この絶望的な状況を杏露・シナーは見事に救い、異例の大出世を遂げてみせたのだ。

326 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 01:59:18 ID:q7v0AJSc0
見た目からは想像できない実力に、いざという時の適格な判断力に行動力。
そして臆病でありながら愛嬌もあり、部下にも上司にも分け隔てなく丁寧にせっしていたシナーは首領であるニダーに大変気に入られ、実の息子のように可愛がられた。

シナーが結婚した時はニダーは涙を流しながら自分の事のように喜び、娘が産まれた時は名付け親にもなった。

マフィアグループというのは、総じて悪人だ。
社会のルールに従えない、落ちこぼれのクズの集まりには違いない。
だが、それでもイエローモンキーというファミリー達は、死と隣り合わせの厳しい悪の世界に身を起きながらも、確かに幸せであったのだ。

327 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:25:08 ID:q7v0AJSc0







―――しかし、8年前。全てが変わってしまったのだ。

328 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:25:56 ID:q7v0AJSc0
ニダーがファミリーの幹部と庭で食事をしていた時だった。

青空の下、談笑を楽しんでいた彼らに当時、北西に領土を広げていたコロンビアマフィア『ハイハット』が奇襲を仕掛けてきたのだ。

団欒の幸せな温もりが一瞬にして戦場と化す。
首領であるニダーの長年の経験とそのカリスマとも言えるリーダーシップが功を制し、なんとか劣勢を覆して攻勢に転じるイエローモンキー一行だったがここで不幸な偶然が起きる。

フルオートのライフルに指をかけたまま頭を撃ち抜かれた敵兵の弾丸が手下を庇ったニダーの両目に掠ったのだ。
すぐさま緊急手術が行われるも、手の施しようもなく、彼は視力を失い、永遠の暗闇に閉じ込められてしまったのだ。

329 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:26:43 ID:q7v0AJSc0

その後、辛くも勝利を治めたイエローモンキーだったが、代償は大きく、ファミリーへの精神的ダメージ、ニダーへの物理的ダメージと、かなりの痛手を負う事となってしまったのだ。

盲目となったニダーの世話をファミリーは嫌がる事なく、進んで行った。
例え目が見えなくなろうが、脚が立たなくなろうが、ファミリーにとってリシャール・ニダーはイエローモンキーの『偉大なる父親(ゴッドファーザー)』なのだから。

無論、言うまでもなくそのファミリーの輪の中にはシナーの姿もあった。
ニダーを実の父親以上に慕っていたシナーは彼の目となり、手となり、足となった。
彼の言うことにいつも忠実に従い、彼の事だけを考えて行動した。

330 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:27:37 ID:q7v0AJSc0
父の為、ファミリーの為なら何だってやった。
武器を捌き、女を拐い薬浸けにし、殺しだってやった。

それでもシナーは幸せだった。
ファミリーに尽くし、父に尽くす人生が幸せだった。


父の、あの一言を聴くまでは。





<ヽ`∀´>「私は、この見えない瞳に、神を見た。信仰に目覚めた。」





首領、リシャール・ニダーのこの一言を。

331 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:28:23 ID:q7v0AJSc0
ある者はとうとうボケたのかと落胆した。
そしてある者は薬のやり過ぎで気狂ったのだと罵った。
ある者は盲目に落ちて命が惜しくなったのだろうと同情し、ある者は見切りを付けるようにそっとファミリーを去った。

結果、ソウサクシティ1の団結力を見せていたイエローモンキーファミリーは大きな内部分裂を起こす事となる。


ニダーはそれまで手を染めていた、ドラッグの売買と売春の斡旋等を全て放棄すると宣言した。
善人にとっては尊敬に値する宣言かもしれないが、悪人からするとまさに気狂った発言でしかない。

薬もダメ、女もダメ。
残った武器の売買と領土の場所代だけで今までの生活が出来るだろうか?

否、出来る訳がない。

332 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:29:14 ID:q7v0AJSc0
当然、シナーは猛反対した。
金銭的な問題も大前提だったが、それ以上に親愛なる父であるニダーが若い連中に嘲笑され、見下されている現状がどうしても我慢ならなかったのだ。

自分を含め、いかにファミリーがニダーを愛しているかを説きながら、何日も何週間も、何ヵ月もかけて彼を説得をした。
しかし、ニダーは断固たる決意で宣言を覆す事をしなかった。


そしてついにシナーはイエローモンキーファミリーから絶縁を決意。
その後、ニダーの元を去るつもりだったファミリーの若い連中を中心に引き抜き、西を去る。

そして程なくして、中国人を中心とした多国籍チャイニーズマフィア『ドラゴン』を南に結成したのである。

333 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:30:31 ID:q7v0AJSc0
つまり、要点をかいつまんで語るとするなら
ば、シナー率いるドラゴンの人間は、父であるニダーを信じてイエローモンキーに尽くし続けたヒートやクールからすると、言い逃れの出来ない『裏切者』なのだ。


しかし、それでもクールはニダーを父親以上に慕い、愛していたシナーの事が嫌いになれなかった。
もちろん父であるニダーだって同じ気持ちであろうことは、賢い彼女には容易に想像できた。


川 ゚ -゚)「……お父様にとってはシナー氏は息子も同然なんだよ」

川 ゚ -゚)「例え、血縁も、思想も、そしてチームも。何もかもが違っても、お父様の中では、な」

334 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:32:38 ID:q7v0AJSc0
クールの言葉にヒートはまた舌打ちをしてバツの悪そうな顔をした。
ヒートもまた、シナーの事をどこか嫌いになりきれない部分があるのだろう。
クールもそれはしっかりと分かっていた。


ノハー⊿゚)y‐「あー、ところでよー。シューの奴はどうなんだよ」


嫌な沈黙を打ち消すためか、ヒートが少々強引に話題を変えてきた。
彼女のこういう不器用なところを何度も見てきたクールは特に突っかかる事なく、自然に返す。


川 ゚ -゚)「昨日、様子を見に行ったが進展は無さそうだったな。3日程寝てないようだったので流石に今朝、無理矢理にでも寝かせたよ」

ノパ⊿゚)y‐「奇人変人のアイツのレーダーにも犯人は引っ掛からねーか。しっかし3徹とはなあ、アイツもシナーのケツ拭いてやろうと必死なんだな」

335 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:34:15 ID:q7v0AJSc0
川; ゚ -゚)「いや、犯人の捜索は最初の1日だけで匙を投げ、残りの2日間は取り憑かれたようになんか意味の解らん踊りを踊っていたようだが」

ノハ;ー⊿ー)y‐「……アイツはよお、本当に何考えてんだか分かんねーわ。うん、マジで」


ちなみに話に出てきたシュールとはクールとヒートの末の妹で『第三の目』と呼ばれる日系アメリカ人の少女である。

彼女は所謂、天才と呼ばれる人間で武器やトラップの発明やハッキング、クラッキングなど、メカニック関係や、サイバー関係に関するものならば何でもこなし、何でも作り、何でも壊してみせるチートのような存在。
言うなれば電脳世界の十徳ナイフのような存在が『マーテル・シュール』という天才少女だった。

336 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:35:54 ID:q7v0AJSc0
ただ、あまりにも天才過ぎたためなのか、それとも単に彼女の性格なのかは不明だが、度々常人には理解しえない『奇行』を起こす事があり、その世界観はかなり独特である。

先天性の白皮症を患っている為、滅多に外に出ることが無く、目立たない存在だが、彼女もまた父を愛し、2人の『義姉』を愛し、ファミリーを愛する人間の1人なのだ。


川 ゚ -゚)「シュールも情報は集めているみたいだがな、芳しくないのだろう。
いざとなったら、私達も協力して人海戦術であたるしかなるまい」

ノパ⊿゚)y‐「頭失った『ドラゴン』の残党どもが反発するぜ? 何てったって親父が葬儀に参加する事を拒んだ低能野郎の集まりだからな」

川# ゚ -゚)「おい」

ノハー⊿゚)y‐「ああ、悪かったって」

337 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:36:51 ID:q7v0AJSc0
挑発するようなヒートの言葉にクールが怒りを露わにする。
いかにも適当な謝罪を返すヒートの視線は向かいの壁をボーっと眺め、当時のニダーのもの悲しげな背中を思いだしていた。


そして、再び2人の間に沈黙が訪れた。







(;・∀ ・)「クール様! クール様!!」


沈黙に身を委ねる2人を叩き起こすかののように1人の青年がドタバタと廊下を掛け上がってきた。
その様子から察するに随分と慌てているようだ。

338 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:38:52 ID:q7v0AJSc0
川 ゚ -゚)「一体何事だ。お父様の私室の前で慌ただしい」

(;・∀ ・)「もっ、申し訳御座いません! ですが至急お伝えしたいことが……」


バッタのようにペコペコと頭を下げる青年は恐る恐るといった様子でクールに何やら耳打ちをした。
すると、クールの眉がピクリと動き少し考えたような素振りをした後「通せ」と命じた。


かしこまりましたっ! と軍人のような大声を上げてまたドタバタと廊下の奥に消えて行った。
それを見送るとクールは後を追うように静かに歩きだした。

339 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:40:47 ID:q7v0AJSc0
川 ゚ -゚)「何をしている、ヒート。お前も客人を迎える準備をしろ」

ノハ#゚⊿゚)y‐「はあ!? 客人!? 親父があんな状態だっつーのにわざわざ顔突っ込んで来る奴がいんのかよ!?」


一体誰だ! とわめき散らす妹をたしなめるように、クールは静かに口を開く。


川 ゚ -゚)「娘さんだよ」

ノハ#゚⊿゚)y‐「あぁ!? 娘だあぁ!?」

川 ゚ -゚)「ああ。今訪ねて来たのはシナー氏の実の娘の……」

340 :名も無きAAのようです :2015/03/03(火) 02:41:28 ID:q7v0AJSc0







川 ゚ -゚)「杏露・スニフィ嬢だ」







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▼・ェ・▼その男、所詮、『犬』のようです。 TOPへ