( ^ω^)赤く染めていくようです 巻の三

52 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:54:26.253 ID:GB7E0NGo0
巻の三、違背

53 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:54:44.821 ID:GB7E0NGo0
三年前

あれが全ての始まりだった

あの日以来、貝のように口を閉ざしている

誰も寄り付かないような山奥で暮らしているんだ

話が出来なくても、誰も困らないだろう

54 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:55:08.037 ID:GB7E0NGo0
貝のように口を閉ざす、何故だと思う

三年前、ある事件があったからだ

衝撃のあまりに声が出なくなった? 違う

舌か喉をやられて出せない? それも違う

禁じられているからだ

あの事件の真相を、誰かに伝えることを

それもお偉い将軍様からだぜ

箝口令を敷かれたってやつだ、やっていられるか

55 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:55:49.038 ID:GB7E0NGo0
世の中、綺麗なことばかりじゃない

汚いことのほうが多いかもしれないな

だから山小屋に籠ったが、まあこれも何かの縁

心の中に抱え続けている深い汚れを、吐き出してしまいますか


( 'A`)「…なあ…もう三年だぜ…」

(  A )「三年も経ちゃいいだろ、将軍様よお…」

(  A )「あんたらにとっちゃただの駒だろうが」

( ;A;)「俺に…俺達にとっちゃ大事な親友だったんだよ!」

( ;A;)「文助ええ…なんで…なんで…」

( ;A;)「ううっ…ううっ…」

56 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:56:30.860 ID:GB7E0NGo0
その男に、名前は無かった

厳密に言えばあったのかもしれないが、親兄弟もいない孤児だ

名前を知る者などいるはずがない

当て所なくふらふらと放浪していた男は、とある村の前で行き倒れてしまった

目を覚ましたとき、男は其処を地獄だと思った

頼れる親類縁者もいない孤独な男には、己以外の他人が全て敵のように映ったから

57 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:56:55.247 ID:GB7E0NGo0
ところが、村の人々は皆、優しく、暖かく男を迎え入れてくれた

だが幼い男に差し伸べる大人の手は、巨大な鬼の手のようにも見えて

嘘だと、傷つけようとしているのだと、幼いなりに本能が拒絶した


…拒み続ける男に、やがて、同い年くらいの少年が近付いてきた

少年の名は、武運文助、貧しい百姓の一人息子だった

名前が無いと言った男に、文助はこう言った

58 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:57:17.392 ID:GB7E0NGo0
( ^ω^)『じゃあ、どくおでいいお!』

( 'A`)『…は?』

( ^ω^)『だから、どくおでいいんだお!
   ひとりに、おとこってかいてどくお、だお!』

( 'A`)『…なんだそれ』

( ^ω^)『だってどくおは、オオカミみたいでかっこいいお!
     ひとりでも、たくましくいきられるかっこいい男、独男だお!』

( 'A`)『…あっそ…マンドクセ』

59 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:57:34.276 ID:GB7E0NGo0
口では素っ気なく言いながらも、男は名前が与えられたことを喜んだ

初めて名前で呼んでもらったことが嬉しかった

それが己を指しているのだと、己が人から選ばれたのだと

存在意義を初めて見出せた気がして、感激に涙した

60 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:57:53.220 ID:GB7E0NGo0
文助はよく独男と遊んだ、独男もまた文助とよく遊んだ

独男にとって文助は名付け親であり、友であり、支えだった

いつしか村の同世代の子供…文助の友人とも付き合いが増え

独男は孤独から解放され、幸福な暮らしを得ることが出来た

61 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:58:13.183 ID:GB7E0NGo0
三年前、あの事件が起きるまでは

62 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:58:38.665 ID:GB7E0NGo0
(  A )「…あんたら、いつからいたんだ?」


背中に殺気を感じて、尚も冷静に独男は問うた

独男の問いに、背に立つ者達は応える


『山奥にいれば気付かれないとでも思ったか』

『我々は常に見張っていた』

『あの事件を知っているのは今やお前だけだ』


(  A )「そうかい…将軍の命で消しに来たってわけか」

63 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:58:57.292 ID:GB7E0NGo0
言葉と同時、独男は文机を蹴倒した

一人が避けた隙に、脇差を抜き避けた男の腕を引き裂く

鮮血が、ささくれ立った年季入りの木柱に迸る

腕を斬られ、退いた間に割るもう一人の襲撃を、屈んで躱す

空振りし、深く入った腹を一閃する

倒れたもう一人を見届ける間もなく、背後から最後の一人が攻撃をしかける

避けるのは無理だと判断し、即座に正面で打つと蹴りを入れた

たじろいだその一人を追撃することなく、腕を負傷した一人の刀を奪うと

己の脇差を短刀代わりに顔面へ投げつけ、視界を塞いだ

64 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:59:26.823 ID:GB7E0NGo0
『うおおおお!!!』

痛みに絶叫した一人が、半狂乱の勢いに任せて独男へ突進する


(; A )(火事場の馬鹿力ってやつかよ!!)


未だ二体一の構図に、元々体力のない独男の不安が増していく

このままやられるのだろうか、あの事件を揉み消す為に…

思い始めたそのときであった

65 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 05:59:53.907 ID:GB7E0NGo0
(; A )

(; A )(…風が…止んだ)

66 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 06:00:18.716 ID:GB7E0NGo0NEWYEAR
今宵は満月、されど風の強さは海にも負けぬ程

その風が、唐突にぴたりと止まる

有り得ないことだ

しかし独男は、その現象をよく知っていた

知らぬわけがなかった、最も間近に見てきたのだから

67 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 06:00:44.170 ID:GB7E0NGo0NEWYEAR
(  ω )


目前に現れた士に、独男は掠れた声で呼びかける

名付け親にして、生涯唯一人の親友を


(; A )「文…助…」


(  ω )

( ^ω^)「助けに、来たお」

68 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 06:01:08.049 ID:GB7E0NGo0
凄まじい速さであった

言葉と同時、放たれた矢の如く駆けた武運文助

見つめる独男の前に広がるは、満開の曼珠沙華

満月に咲き誇る緋の花は、哀しくも美しかった

69 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 06:01:21.914 ID:GB7E0NGo0
(  A )「…」

(  A )「文助…」

( ;A;)「文助…」

( ;A;)「文助ええええ…あああ…ああ…」

70 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 06:01:40.661 ID:GB7E0NGo0
( ω  )






(;ω; )

71 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 06:02:01.061 ID:GB7E0NGo0
三人の骸が転がる中で、独男は泣き続けた

鮮やかな赤血が黒に染まっていくまで

慟哭は山奥に木霊し、止む気配を見せない


月が隠れ、朝日が差し込むまで泣き続けると

独男は骸の中から短刀を抜き出した

刀身が朝日に輝く

最初、腹に突き刺そうとして持ったが、止めた

72 : ◆noe7UUkd3A :2016/01/03(日) 06:02:14.519 ID:GB7E0NGo0
巻の三、終







巻の四、真実