川 ゚ -゚)大政奉還中に離婚をするようです(^ω^ )

37 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 00:55:36 ID:ZQd9Xr.20

( ^ω^)「……」

江戸幕府の第十五代将軍、徳川慶喜が大政奉還をした。そのような報せは、瞬く間に城内を駆け巡った。

当然だろう。200年以上にも及ぶ江戸幕府が今にも潰れそうだと言うのだから。

だが、あくまでも潰れ「そう」なだけだ。潰れるわけではない。

一時的に政権が朝廷に渡っただけだ。この後にまた徳川家が政権を握ることになるだろう。


――そう、潰れると決まったわけではない。





川 ゚ -゚)「ほらな、私の言った通りだろう」

( ^ω^)「…………」

川 ゚ -゚)「2年前から言っているだろう。いい加減認めるんだ」


川 ゚ -゚)「私は『内藤くうる』ではない」


川 ゚ -゚)「私は『素直クール』。西暦1994年10月7日生まれの女子大生だ」

川 ゚ -゚)「……もっとも、この時代に来てから2年経った。今は23歳ということになるがな」

38 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 00:57:09 ID:ZQd9Xr.20





川 ゚ -゚)大政奉還中に離婚をするようです(^ω^ )





.

39 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 00:57:49 ID:ZQd9Xr.20


―――
―――――


――――内藤の正室、素直くうるがおかしくなったのは2年前だ

なんの予兆もなく、突然

川 ゚ -゚)「ここはどこだ」

と言い放った。

悪戯好きのくうるのことだ。きっとまたいつもの小芝居に違いないと思っていたが、どうも様子がおかしい。
まるで本当に別人になったかのように思われた。

川 ゚ -゚)「……まさか、タイムスリップを我が身で経験することになるとは思わなかったよ」

いくらか話し合ったところ、なんとこのくうるはどうやらくうるではないらしい。
未来から来た「素直クール」なのだと本人は語る。
そんなもの、信じられるか。

( ^ω^)「くうる、いい加減にするんだ」

川 ゚ -゚)「お前が『くうる』とやらの旦那か。ふむ、なんとも締まりのない顔付きだ」

(#^ω^)「無礼者!!」

川 ゚ -゚)「わわ、急に大声出すなよビックリした」

40 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 00:58:49 ID:ZQd9Xr.20

(#^ω^)「悪ふざけはやめろ!!もしもまだ未来から来たなどと抜かすなら、証拠を示せ!!」

内藤は酷く苛立っていた。
ただでさえ幕府が不安定な今の時期、こんな戯言に付き合っている暇など無かった。

徳川家に代々仕えている内藤家。
尊王攘夷を叫んでる士族たちが蔓延っている今の情勢は、お世辞にも良いとは言えない。

内藤だけではない。家臣たちも気が立っているようだった。

川 ゚ -゚)「……ふむ、証拠か。そうだな……おい、内藤とやら」

( ^ω^)「まだ抜かすか。それと内藤と呼ぶな。お前も内藤だ」

川 ゚ -゚)「ではなんと呼べば良い」

( ^ω^)「蓬莱だ。良い加減にしないと……」


川 ゚ -゚)「蓬莱。今は西洋の暦で何年だ?」

42 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:00:48 ID:ZQd9Xr.20

( ^ω^)「……は?」

川 ゚ -゚)「いいから答えろ」

( ^ω^)「何の意味が……」

川 ゚ -゚)「答えてくれたら、一つ良いことを教えてやる。未来からの土産だ」

意味がわからない。
こいつは本当にくうるじゃないのか?

混乱しつつも、内藤は家来に調べさせた。
西洋の暦なんぞ滅多に使わないので、少し手間取ったようだ。

( ^ω^)「1865年だ」

川 ゚ -゚)「ふむ……そうか」

( ^ω^)「……何か言うことがあるのではないのか?」

川 ゚ -゚)「おお、ありがとう。そうだな、約束を果たしてやる」

あの気弱なくうるが、こうも傍若無人な振る舞いをしているのが信じられなかった。

容姿も、声も、着ているものも何もかも同じ。
なのに、中身が決定的に違う。
とても演技には見えなかった。

43 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:01:38 ID:ZQd9Xr.20





こいつは



川 ゚ -゚)「しばらくすると、薩摩藩と長州藩が手を組む。これを契機に、幕府は一気に衰退の一途を辿る」



本当に



川 ゚ -゚)「そして、ここからが重要だ」

川 ゚ -゚)「――江戸幕府はもう、そう長くはない」



――くうるなのか?





.

44 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:03:32 ID:ZQd9Xr.20

信じられるわけがなかった。
薩摩も長州も犬猿の仲。手を組むなんて信じられない。
土佐の小僧が何やら手を回しているようだが、所詮は下級武士。まさかそんな大それたことが出来るはずもない。


そう思ってた。


だが、くうるの言ったことが現実となった。


(;^ω^)「なっ……!」

家臣から報告を受ける。バカな、そんなはずがない。
手を組むだけでも十分大きな報せなのだ。
だが、内藤が驚いているのはそれよりももう一つ。

川 ゚ -゚)「な?言った通りだろう?」

くうるが言ったのと、全く同じ日。
慶応2年の1月21日に、同盟が組まれたというのだ。

流石の内藤も、日付までピッタリ言い当てられては認めざるを得ない。
だが、どうしても信じきることが出来なかった。

45 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:04:33 ID:ZQd9Xr.20

川 ゚ -゚)「勉学は大事だな。いつどこで役に立つかまるで分からない」

( ^ω^)「……信じぬぞ」

川 ゚ -゚)「まだ私が『くうる』だと言い張るか。往生際の悪い」

内藤はひどく困惑していた。
だが、あの日からこの女の振る舞いが『くうる』とは程遠かったのも事実。

( ^ω^)「……いや、お前はくうるではない。それは信じよう」


川 ゚ -゚)「ほう」

認めたくなかった。政略結婚でも何でもなく、ただひたすらに愛して手に入れた女だ。それがこんな、わけもわからない女と中身が入れ替わったなど、認めたくなかった。

だが、受け入れざるを得ない。
ここまで突きつけられて現実を認められないほど、餓鬼ではないのだ。

46 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:05:55 ID:ZQd9Xr.20

それでも――


( ^ω^)「だが、幕府が消えるだと?そんなわけなかろう」


――これは、これだけは、信じることが出来なかった。

きっと、この女は妖術か何かの類いを操るのだろう。内藤家を、そして徳川家を混乱させて内部から蝕もうとする刺客に違いない。

そんな意味不明な理屈を頭の中で組み立て、現実から目を背けた。


川 ゚ -゚)「……分かった。それではもう一つ、予言をしてみせよう」

そう言い放つくうる
――いや、「クール」の目には、覚悟が見えた。

( ^ω^)「……承知した」

川 ゚ -゚)「だが、一つ条件がある」

( ^ω^)「なんだ。申せ」

47 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:07:10 ID:ZQd9Xr.20

川 ゚ -゚)「――この予言が的中したら、その時は私を自由にしてくれないか」


( ^ω^)「……」


予想は出来ていたことだった。

もし仮に、万が一こいつの言うことが全て真実だとしたら、この「クール」にとって内藤家など何の価値もない。
このままこの家に縛られ続けて死んでいくよりは、放浪なり何なりした方がマシだろう。

――いや、きっとこの女は未来へと帰る手段を探すつもりなのだ。
不可能かもしれない。無駄な努力かもしれない。
それでもきっと、この女はやるだろう。やってみせるだろう。
そう思わされるような気概が、この小娘には有った。

48 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:08:03 ID:ZQd9Xr.20





だが、まだ内藤は信じきったわけではない。
いや、認めたくなかったのだ。


中身は違えど、姿形が「くうる」のこの女が

自らの元を旅立っていくということを。




.

49 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:11:03 ID:ZQd9Xr.20

―――――
―――




結局、「クール」の予想は見事的中。江戸幕府はあっさりと大政奉還をしてしまった。
しかもこいつの話だと、二ヶ月後には幕府が本当に機能を停止してしまうらしい。

その後のことについて、クールは何も語らなかった。だが、予想はついてる。
戦争が起きるのだろう。旧幕府軍と、新政府軍とやらで。



川 ゚ -゚)「約束だ」

(  ω )「……」

川 ゚ -゚)「お前と初めて会った時、私はお前の約束に応えた。蓬莱、お前も男だろう。男なら覚悟を決めろ」

この小娘の言うことはもっともである。ここで約束を反故にしてしまうなど、内藤家当主として、何より男としてあってはならない。

認めざるを得ないのだ。
この女は本当に「素直クール」であると。
未来から来たということを。

――「内藤くうる」はもう、この世に居ない、と。

50 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:12:46 ID:ZQd9Xr.20



川 ゚ -゚)「――お前」


( ;ω;)


川 ゚ -゚)「――――」


クールは何も言わなかった。黙ってその場から離れ、自室へ身支度を整えに行く。

とは言っても、持ち物なんざほとんど無い。突然この時代に放り投げられたのだから、未来の物なんて一つも持ってない。

着替えを数着と、銭をいくらかだけ袋に仕舞う。

書き置きなど不要だろう。準備などと言っても、せいぜいこの程度だ。


この2年間、世話になった家来や従者たちに一声かけていく。
中には励ましてくれるものや泣いてくれたものもいたが、もちろんクールをよく思ってない人間も少なからずいた。

当然だろう。仕方の無いことだ。

私は内藤家を見捨てるのだから。

51 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:14:14 ID:ZQd9Xr.20

薄々感づいてはいた。幕府が滅ぶということが、この家にとってどのような影響を及ぼすのか。

そして、どのような結末を迎えるか。


だが、私には関係のないことだ。歴史を大きく捻じ曲げるなどという大それたことをする気はさらさら無いし、そもそも助けてやる義理もない。
この内藤家に恩を感じてはいるが、それとこれとは話が別だ。

歴史を変えてはならない。
矮小な人間に、歴史を変える力なんてあってはならない。

そして何より、蓬莱がそれを認めないだろう。

ならば、私は旅に出よう。
そして自力で未来へと帰ってみせようではないか。

それすらも許さないとは言わせない。元はと言えば私は被害者なのだ。

なぁ、そうだろう?

.

52 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:15:24 ID:ZQd9Xr.20

あらかた用事を済ませ、最後にもう一度内藤のもとへ。
今度は泣いてなどいない。凛々しい顔付きだった。

( ^ω^)「――素直クール」

川 ゚ -゚)「なんだ、蓬莱」

( ^ω^)「……今まで疑って、誠にすまなかった。どうやらお主の言っていたことは、全て真実らしい」

川 ゚ -゚)「……」

先ほどまで泣いていたのが嘘のようだ。謝罪をしっかりと受け取り、クールは言葉を投げる。

川 ゚ -゚)「お前のせいじゃないさ。私だってお前の立場だったら、きっと信じてやることなど出来なかっただろう。むしろ、最後まで疑ってくれてありがとう」

( ^ω^)「……ふっ、中身は違えど、やはりお主は良い女だ」

川 ゚ -゚)「はは、お前も随分と良い面構えだ。初めて会った時の間抜け面とは大違いだな」

( ^ω^)「ぬかしよる」

こんな穏やかな気持ちで会話をするのは、初めてのことであった。
夫婦といえど、情事に及ぶこともなく、暴力をふるわれることもなく、ひたすらに無関心を貫かれていた。

憑き物が取れたみたいだな、とクールは思った。

53 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:16:23 ID:ZQd9Xr.20

おもむろに内藤は懐から袋を取り出し、クールに投げつける。

川 ゚ -゚)「これは?」

( ^ω^)「旅の餞別だ。これだけあれば、暫くは不自由しないだろう」

中に入っていたのは銭だった。
少し多過ぎるのではないかと躊躇したが、この男にはきっと何を言っても無駄だろう。

川 ゚ -゚)「ありがたい。大切に使わせていただく」

( ^ω^)「うむ、それで良い」

川 ゚ -゚)「……」

( ^ω^)「……」

互いに無言。眼だけで語り合う。
数分にも満たないこの時間が、二人にはとても長く感じられ、心地良いとさえ思えた。

54 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:17:26 ID:ZQd9Xr.20

川 ゚ -゚)「……じゃあ、もう行くよ」

クールは立ち上がり、膝の埃を払う仕草をする。内藤もそれに倣った。

( ^ω^)「……そうだな」

川 ゚ -゚)「ふふ、離婚だな」

( ^ω^)「まったく……そうそう、言い損ねていたことがあったのだ」

川 ゚ -゚)「?」

立ち上がったクールに内藤は抱きつく。クールは少し驚いた表情を見せたが、内藤の手が自分の頭を撫でていることに気付き、黙って身を委ねた。

暫くして、顔を見合わせる。

綺麗な顔をしている。
手放すには惜しい女だ。

だが、この女は「くうる」ではない。
我のものではない。

「素直クール」だ。
きっとこの女なら、大丈夫だ。
笑顔で見送ってやろう。

.

55 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:18:12 ID:ZQd9Xr.20





( ^ω^)「――行って来い。そして、未来へ。お主の時代へと、帰るんだ」

川 ゚ -゚)「――ありがとう、蓬莱。行ってくるよ」




川 ゚ー゚)「お前とは離婚だ。私は実家に――――未来に帰らせてもらおう」




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56 :名も無きAAのようです :2016/01/01(金) 01:18:53 ID:ZQd9Xr.20





川 ゚ -゚)大政奉還中に離婚をするようです(^ω^ )




おしまい







<支援絵>
川 ゚ -゚)大政奉還中に離婚をするようです(^ω^ )

(お題:大政奉還中に離婚)




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