【感想】( ^ω^)星を見る人のようです

刑事の内藤ホライゾンは、風俗店監禁事件の被害者、井出麗子を病院から引き取った。
白痴となった彼女を家に一人でおいておくこともできないため、刑事課への出入りを特別に許される。
これについて因縁のある雨垂は内藤を睨み、また刑事課の者はこれに懐疑し、事件のことを調べ始める。

星を見る人たちの、悲愛に満ちた物語。


( ^ω^)星を見る人のようです(文丸新聞)




この感想文を書くにあたってふと気になったことがあったので、この前創作板総合にて質問をしてみた。
「地の文無し+シリアスでオススメ教えて」と。
それで一番に返ってきたレスで挙げられたのがこの作品、星を見る人。
そしてそれ以降レスが返ってこないし、私も他に類を見たことがないので、この作品がその代表、いや、ブーン系中唯一の作品であるといって差しつかえないのではないだろうか。

会話文だけでこれ程もの悲しく、心憂い悲劇を描いたこの作品には「お見事」とただただ感服するばかり。
読後はこのやり場のない気持ちをどうすればよいのかと、胸がぎゅうっと締め付けられる感覚に陥りました。


星を見る人は、2011年の紅白年末短編合戦にて投下された作品の一つです。
短編祭りの作品ですから、当然短編。
1時間程度で読めるということで気軽に手を付けることができる、私としてもかなりオススメの一品です。

最近また読み直してみたのだが、初めて読んだときとはちょっと違う感想も持つことが出来ました。
「この話、舞台演劇で見たらとても栄える」と思ったのです。
これをこのまま台本として、役者をステージの上で演じさせることがきっと出来る。
それ程までにこの作品の完成度は高い。
特に"ラスト近くのあのシーン"は、きっと素晴らしく栄える。間違いない。
多分私は感涙しながらスタンディングオベーション拍手喝采してしまうでしょうね。

いや、さて、この辺で閑話休題としときましょう……。



<以下ネタバレを含む記事のため、作品を未読の方は注意を要する>



この話の一番のテーマは、「叶わない恋」だと思います。
これを軸にしっかりと登場人物たちの人間性が描かれていて、交わらない想いが悲劇を生み出す原因となっている。

ζ(゚ー゚*ζは('A`)のことが好き、という事実が第一にありますね。
これがそもそものこの物語の原点です。
そして、( ^ω^)はζ(゚ー゚*ζのことが好き。
(´・ω・`)もζ(゚ー゚*ζのことが好き。
さらに川 ゚ -゚)は( ^ω^)を、( ・∀・)は川 ゚ -゚)に恋心があります。
これを簡単に相関図にすると、こうなる。

('A`)←ζ(゚ー゚*ζ←( ^ω^)←川 ゚ -゚)←( ・∀・)
       ↑
     (´・ω・`)

見事に全員一方通行。
ほとんどの人物が「叶わない恋」をしています。
1時間で読み終われる短編で6人もの人物に恋愛をさせているからこそ、濃密な物語に仕上がっているのだと思う。

「事件」に関係は無いのに、川 ゚ -゚)と( ・∀・)の片思いをも描いているのが大きい。
何故ならこの2人の片思いがないと、刑事課の者たちの存在が、言ってしまえば蛇足になってしまうからだ。
幼なじみ4人の中にも叶わない恋があり、刑事課の中でもまた、叶わない恋がある。
そして"ラスト近くのあのシーン"を読者が見たとき、「叶わない恋」というテーマからそれぞれの人物の立場に立って、これを読むことが出来る。
まさに「人間ドラマ」が生まれている。

( ^ω^)は何を考えていたのか。
(´・ω・`)は何を思ってあの行為に至ったのか。
というのは勿論。
川 ゚ -゚)はどんな気持ちだったか。
その川 ゚ -゚)を見て( ・∀・)はどんな心境だったのか。

というように、川 ゚ -゚)や( ・∀・)にも同情してしまえるよう作ってある。
この全員の心情を考えることができるというこの場面は、三人称視点の書き方が最も効果を発揮しているところでもありますね。
全員が主人公、って感じで。



( ^ω^)の、子供時代に付いていた語尾の「~お」が、大人になって無くなっていたり、デレが白痴になっていたり、星を幼なじみ4人を繋ぐ象徴にしていたりと、設定も見事なのだが、他に、書き方で凄いと思った点を挙げる。

『【美府市精神病院 受付前 内藤はデレを引き取る】』
『【五年前 美府市 国道沿いの小さな喫茶店にて 内藤はデレとの会話を回想する】』
『【美府県警察 刑事課 夜の十時を過ぎ各々が帰宅を始める時間になる】』

この文頭の状況説明が味を出している。
単に時間軸を表すだけじゃないってのが、斬新でした。
そして極め付けがこれ。

『【美府市 美府市警察敷地内にて 星を見る人】』
『【美府市 駅前の屋台にて 星を見る人】』
『【美府県警察 刑事課 ベランダにて 星を見る人】』

「○○達は星を見ている」とかじゃなくて、タイトルをもってきての「星を見る人」という書き方。
なんてニクい演出か。しかしこれがとても格好良い。

そしてこの各々が星を見上げる場面が、ラストのこのシーンで再び思い出される。


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【二十数年前 夏の草原にて 星を見る子供たちの会話】

ζ(^ー^*ζ「星って、すごいね!」

( ^ω^)「なんでお?」

ζ(^ー^*ζ「だって、世界中の人たちがみんな一緒の星を見ているんだよ!」

(´・ω・`)「わー! それはロマンチックだね」

('A`)「本当だ。僕、気がつかなかったよ」

(*^ω^)「デレは天才だお!

ζ(^ー^*ζ「えへへ。……だから、寂しくなったらいつも星を見ていようよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「みんなで同じ星をみれば、みんな繋がってる事が出来るの! これで寂しくないね!」

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『みんなで同じ星をみれば、みんな繋がってる事が出来る』
この言葉が大人になった幼なじみ4人、それに刑事課の皆が見上げたあの星空を思い出させる。
この幕引きが読者の胸に蟠るどうにもならない思いを更に増大させる。
なんか作者の術中にまんまと嵌められているみたいで悔しいが……。



そして、なんといってもやはり"ラスト近くの、この名シーン"。


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(´・ω・`)

(‘_L’) カツカツ…

(  ω )カツカツ…

(´・ω・`)

(  ω )カツカツ…

(  ω )「ショボン」カツカツ…

(´ ω `) ジワッ……

(  ω )「約束、守れなかった」

(´;ω `) ポロッ

(  ω )「すまない」

(´;ω;`) ポロッポロッ……

(´;ω;`)ゞ バッ!!

( _L ) ピタッ

( _L )

( _L )「全体、敬礼……ッ」

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読むの2回目だっていうのに、目に熱いものが込み上げてきてしまいました。
最高にドラマチック、という言い方は陳腐な表現かな。
とにかく、感動致しました。


……さて、ここまで完璧に纏め上げられた短編は、なかなか見られるものではないと思います。
それも地の文無しシリアス。
この作品でしか味わえないジャンルだということを念頭に置いて、是非この悲哀の、もとい悲愛の物語をもう一度読んでみてはいかがでしょうか。

そうだ、もし他に地の文無しシリアスの作品があるのであれば、お教え願いたい。
もしくはそこのあなた、ちょっと書いてみませんか?