【感想】( ^ω^)ブーンがアルファベットを武器に戦うようです

ラウンジ、オオカミ、そして弱小国ヴィップ。
世は戦乱。「アルファベット」を武器にして、3国が天下統一を目指していた。
18歳になったブーンは、親友ドクオと共にヴィップ国軍に入軍するべく、そのためのテストが行われる城下町の国立公園へと向かう。
受けた者全員が合格を言い渡されていく。そんな拍子抜けする程簡単なテストに、余裕を持ってブーンも挑む。
が、しかし―――

「不合格」

言葉を聞いても、ブーンは身動き一つ取れなかった。


( ^ω^)ブーンがアルファベットを武器に戦うようです(ブーン芸VIP)




ブーン系民なら誰もが名を知る、また、ブーン系を知らずともこの作品は知っているという人も少なくないであろう、巨編アルファベット。
全120話という途轍もなく壮大な物語を紡いだこの作品は、多くの読者を熱中させ、涙させ、そしてその胸に燻る憧れや浪漫を沸き上がらせ、復活させたことだろう。
この作品の魅力は既に多くの読了者によって語りつくされたこととは思うが、私も心動かされた者の一人として、ひとつ語ってみたいと思う。


思えば、私がアルファを読み始めたのは、完結して少し経ってからだった。
もちろん、名前は知っていた。
大体、アルファベットを武器に、という設定がまず並でないし、これだけですごく興味を引かれました。
しかしそもそも、私がブーン系に出会ったのがアルファの118話が投下されたおよそ4ヶ月後だったので、私がブーン系に完全にのめり込んだ頃には、多分これは永久に完結しないのだろうなと、だったらこんな長いものに手をつけるのは御免だなと感じていたんだと思う。
それが2012年にとうとう完結したとお祭り騒ぎが起きているのを見つけて、それじゃあ読んでみようかと、1話目、つまり世界暦514年・夏へと飛び込んだのだった。

さて、すると不思議も不思議。
スラスラと読み進められる。作品が長編だなんて事は気にもならない。全然苦じゃない。
むしろこの物語に終わりがあるなんて、なんて勿体無いんだ、なんて思ったりして。
もっと続きを、さらに次の話をと、本当に寝る間も惜しんで読み続けました。
そしてあっという間に120話まで読了……。

誰かが言ってましたが、記憶を消してもう一度最初から読んでみたいなんて思える、まさしく一流の逸品ですね。
さて、前置きが長くなりましたが、まだ言いたいことの1割も言ってませんよ……。



<以下ネタバレにつき、作品を未読の方は絶対にこの先を読まないことを強く推奨します>



といっても、第1話の魅力は何々、第2話の見所は何々、なんて挙げていくと、これを120個も書かなくてはならなくなる。
だから、私がこの作品における特に素晴らしいと感じた点を、紹介することにしよう。

あなたが既読者だと仮定して、「アルファの凄いところを言ってみて」と言われれば、何と答えますか?
「ストーリー展開が上手い」「一人一人キャラが立っている」「戦闘描写に心熱くなる」どれも本当だと思います。
感想スレとかでもこのあたりが指摘されているのをよく見ます。
しかし、数あるブーン系作品の中でも、アルファのピカイチに輝いている凄みは、別の所にある。
「焦らすのが上手」何と言ってもここにあると、私は思います。

第1話、ブーンが国軍の入軍テストでアルファベットAを持とうと、その柄を握るが、その異常な熱さに驚いてしまい……。


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 冷徹な瞳で、動じることもなく、ただブーンを見ている。
 半ば、睨みつけるように、蔑むように。

(兵`Д´)「0864、不合格」

 言葉を聞いても、ブーンは身動き一つ取れなかった。





















 第1話 終わり

     ~to be continued

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他の863人全員が難なく合格できたテストに、主人公ただ一人だけが不合格。

こんな、その話の中で最高に盛り上がるところでぶった切る。
読者に「えっ!この後どうなんの!?えっ!?」と思わせて、焦らし、その次の話に期待を持たせる。
憎ったらしい演出ですよね。
こんなの、2話目も続けて読むに決まってるじゃないですか。
しかも、どの話を開いてみても、そのほとんどがこんな終わり方をしているんだから、私が徹夜で読みまくって次の日寝坊したのも仕方のないことだと切に思う。

「ストーリー展開の上手さ」と混同されがちだが、この「盛り上がり所で切る」というこれが、私の言う「焦らしの上手さ」である。


他にも、読んだ作品の内容を比較的すぐ忘れてしまうこの私に、未だ鮮烈な印象を与え記憶させている焦らしが、以下のシーン。
7話70レス目、ブーンが入軍2ヶ月で早くも少尉の地位を与えられた、その後のドクオとのしばらくの会話の後。


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( ^ω^)「じゃあそろそろ行くお」

('A`)「おう、頑張れよ。応援してるぜ」

(*^ω^)「ありがとだお! 行ってくるお!」

 あまり多くない荷物を抱えて、部屋を出た。
 気分は軽やかだった。


('A`)「……けっ」

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このドクオの『……けっ』
話の流れからしてどう見ても、嫉妬からくる悪態です。
私はこの『……けっ』が非常に怖かったのを覚えてます。

入軍前から目をかけられ、言い方を変えればショボンに贔屓されて2ヶ月間を過ごして、ついでに将校までなってしまったブーンに、気の許せる同期の仲間なんてものがあるとは思えません。
そんな時に、それまで親友という間柄だったドクオさえも、ブーンは失ってしまうのか。
もうこの時は気が気じゃありませんでしたね……。

しかし私、そんなに作中キャラに感情移入しやすくないと思うんだけどなぁ。
何でこの時あんなに恐怖を感じたのか……。

で、この『……けっ』の理由は18話で明かされます。焦らしますねぇ。
まあ、これは焦らしというより伏線もどきと言った方が正しいかもしれませんが。


あとは特に抜粋して例を挙げるなら、一気に飛ぶが119話の最後。
ブーンとショボンの一騎打ちのシーン。"それ"から十年後。


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 決戦の地に佇む、一人の男。
 
 
 
 虚空を見上げ、それから静かに、手向けの花を二つ置いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  第119話 終わり
 
     ~to be continued

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一騎打ちは本当にいいところ、最高潮の盛り上がりを見せたところで切れる。
その後で、この最後の1レス。

この男とは一体誰なのか?
手向けということは、やはり決着がついたのか?
しかし、何故花は"二つ"置かれたのか?

この焦らし方にはもう非情さすら感じますよね。
気にならないわけがない。
このように、読者の心を掴むのが本当に上手い作品だったと思います。



アルファは三国志、戦記モノなだけあって、多くの戦闘シーンがありますよね。
本格的な戦略や陣形等を駆使し、まさしく一軍として戦う所を描いていたり、個人対個人、もとい、武人対武人という白熱する見せ所もちゃんとあり、読者は一様に盛り上がり、応援に力を籠めたことと思います。
故に「アルファの戦闘描写が好き」という感想も出るのでしょう。

しかし、再度読み返してみると、アルファはそんなに丁寧に戦闘の模様を描いているわけではない、というのを発見させられました。

60話44レス目。ドクオ対ミルナ。(私は60話が一番好き)


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 Uのようにリーチのあるアルファベットなら、縦の攻撃には反応しづらいはずだ。
 ここは振り上げや振り下ろしで攻撃していくしかない。

 それでもミルナは受け止めてきた。
 さすがに、アルファベットの使い方は巧い。

 押し返される。
 怯むわけにはいかない。即座に振るい直した。
 今度は、横。

 だが、横の攻撃では弱すぎる。
 縦に構えられたUに、軽々と受け止められた。
 すぐにアルファベットを引く。

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どうでしょう。
『今度は、横。』とか『すぐにアルファベットを引く。』とか、かなり簡潔に書かれています。
もっと丁寧に書こうとすれば、いくらでも書ける。
例えば、「( ^ω^)ブーンがシリアルキラーになったようです」とか。
これはもう丁寧も丁寧、事細かに戦闘シーンが描かれています。

この違いは何を生むのか?
想像の余地が生まれること、でしょうね。

例えば、『今度は、横。』
ドクオはどんな風にアルファベットRを横に振るったのか?
右からか、左からか。腰を深く落としていたのか。片手で振るったのか。両手で振るったのか。その時の表情は。
読者によって、それぞれ違ったイメージがあるのではと思います。

(多分)戦闘シーンに限っては、細かく描写するほど(想像の余地はなくなるので)、第三者視点で、俯瞰して見る感じで、その戦闘を傍観している気分になれる。
逆に描写が荒いほど(限度はあるが)、キャラに感情移入でき、言ってしまえば一緒に戦っている気分になれる。
というのが、私の見解。

想像の余地がある、一緒に戦っている気分になれるからこそ、アルファの戦闘シーンに読者は熱くなれるのではと思う。


戦闘描写がある他作品と、この丁寧さを比較するとなれば、

あらチー<正義ヒーロー<アルファ<『決闘』<シリアルキラー

こんな感じ。
あーでもこれみんな熱いわ。
私の見解は当てにならないかもしれない。



っと、戦闘もいいが、しかし作品が一番主張しているところは、やはり各人の、国への想いや、人への想い、
つまりはこの世界で生きる人間それぞれの「生き様」だと感じます。
戦は生きるための手段であり、目的ではない。あくまでおまけ。
120話まで読んで、つくづく思います。

『( ^ω^)ブーンがアルファベットを武器に戦うようです』は戦争小説ではない。
様々な人間が己の信じた道をつき進む上で交わる、人間ドラマだと、私は宣言し、もう一回読み直してみることを勧める。

かくいう私もこの文章を書くために読み直してるのだが、案の定止められなくなってて困っているところである。