(゚、゚トソン 点数、名声、私の絵 のようです

71 :(゚、゚トソン 点数、名声、私の絵 のようです :2013/09/28(土) 00:36:31 ID:BPMSsqjE0
『授業中に描いたヤツです。相変わらずの低クオリティ/(^o^)\wwwww
早くバイトでもしてペンタブ買いたいわぁ。。。気が向いたら後で塗るかもね(´・ω・` )』

(゚、゚トソン「よし、投稿っ。ポチッとな」

寝転がってスマホを操作し、今日の数学の授業の時にノートの隅っこに描いた絵を、私はピクシブにアップした。
ただ今絶賛放送中の、人気アニメのキャラクターの半身をグリグリサッサッと落書きしたものだ。
なんせ授業中だったし、特に数学の担当は校内でも堅物兼厳しいことで有名なあの盛岡先生なので、その監視の目を掻い潜って描いたこの絵が低クオリティなのは、どうか大目に見てほしい。
ま、そんなもんわざわざ上げるなよって言われればそれまでなんだけどね(笑)

(゚、゚トソン(こんな下手くそな絵でよければ見てやってください( ˘ω˘)スヤァ……っと)ポチポチ

今しがた上げた絵が貼ってあるピクシブのURLリンクを載せて、ツイッターにてつぶやく。

(゚、゚トソン(まだ日付変わる前だし、流石にみんなまだ起きてる……よね?)

『 ほわっちょ@勉強がんばらない。 @kmkm7210         1分
  @tosomaru トソ丸ちゃんの落書きktkr!!!( ˘ω˘)スヤァ      』

(゚、゚トソン「ちょwwwほわっちょさんwwwww相変わらず反応早いwwwww」

早速私のツイートに反応してくれたフォロワーの人がくれた返信に、思わずニヤけてしまう。
時間を確認すると絵の投稿から5分程が過ぎていたので、そろそろいいかなと、自分のツイートからリンクを踏み、もう一度落書きを貼ったピクシブのサイトへと飛ぶ。
そして真っ先に評価の欄へとスクロール。
見てみると、評価回数は2、総合点に20の数字が付いていた。

(゚、゚*トソン(うはwwwこんな絵にwww20点wwwwwあざーすwwwww)

それからしばらくお気に入りのサイトを巡回した後、寝る前、もう一度ツイッターの最終チェックをする。
今度は別のフォロワーが「これが落書き…だと…」なんてつぶやいているのを見つけて、私は大いに満足しながら目を閉じた。

72 :(゚、゚トソン 点数、名声、私の絵 のようです :2013/09/28(土) 00:38:53 ID:BPMSsqjE0
寝覚めは割と気持ちよかった。が、学校が退屈なのを思い出すと、どうしても億劫になる。
特に今日、金曜日。我が高校にもいよいよ文化祭の日が近づいているということで、そのためのクラスでの出し物の話し合いがあるらしいから、余計にだ。
クラスの中でも目立たない、その中でも腐女子なグループに属している私に、手ぬぐいを捩じってハチマキ風に装備するようなリア充のDQN共と同じように祭りを楽しめというのは、ちょっと酷な話だと思う。
そんな風に考えている私が、放課後のクラスミーティングの時になんと名指しで、役割を割り振られたのだから、そのときのテンパりようったら、そりゃあもう半端なかった。
 _
(;゚∀゚)「いやーごめんごめん。いきなり名前上げちゃって」

話し合いが終わり、各々が帰り支度をしている最中、真っ先に私の席まで歩いてきたこいつの名前は、長岡ジョルジュ。
このクラスの中でもリーダー的な地位に立っているこいつが、先程私を「お化け屋敷の宣伝のチラシを描く係」に推薦してくれやがった張本人だ。

(゚、゚;トソン「あ……いえ……別に大丈夫、ですよ」
  _
( ゚∀゚)「そう?いやでもホント、チラシは絶対必要だと思うからさー。ほら、都村さんって、画伯とかって呼ばれてるらしいじゃん?折角なら上手い人にお願いしたいなーって、思ったんだよねー」

(゚、゚;トソン「そんな、大したことないですけど……」
  _
( ゚∀゚)「えーでも、クラスん中では一番上手いっしょwどう?お願い、できる?ダメ?ダメ?」

(゚、゚;トソン「そ、そこまで言うなら……い、いいですよ」
  _
( ゚∀゚)「マジ!?いやー助かった!じゃ、出来るだけ早くお願いねー。ヨロシクゥッ!」

右手をビシッと空中でチョップさせると、ジョルジュはまた風のように、教卓の辺りでうるさくしているDQN仲間の所へと加わりに行った。
対して未だ状況を上手く把握しきれていない私の方には、いつもお昼を共にしている地味子グループの面々が、様子を伺いながら近寄ってくる。
「大丈夫?」「それにしても、そういうことなら事前に相談しにくればいいのにね」「でも、実際トソンちゃん絵上手いし、ダイジョブっしょ!よっ!トソ画伯!」
と、私と同じように文化祭を快く思っていなかったはずの仲間たちが、割と嬉々としてかけてくるそんな言葉たちに、

(^、^;トソン「まぁ、やれるだけやってみるよ」

私は自信なさげに作り笑いを浮かべてみせるだけだった。

73 :(゚、゚トソン 点数、名声、私の絵 のようです :2013/09/28(土) 00:40:16 ID:BPMSsqjE0
(゚、゚トソン「はぁ……。しゃーない。やりますか」

それから放課後、力なく家に帰ってきた私は、頼まれた絵を描く作業をどーしてもやる気にはなれず、手を付けようと決意したのは2日後、結局日曜日のお昼過ぎのことだった。

(゚、゚トソン「まぁ構図は、サササーッと、こんなもんで……」

適当にA4のコピー用紙に、鉛筆で下書きしていく。
ホラーといえば定番の貞子を模した感じで、中央に井戸を置き、そこから白い死に装束を着た髪の長い女が這い出して来ているような……って、これじゃまるっきり貞子そのまんまだな。

(゚、゚トソン「まー所詮一高校の、そのまた一クラスの文化祭のチラシだし?適当でいいっしょ」

井戸と女の他に色々と装飾し、それっぽい雰囲気に仕上がったと思ったら、今度はペン入れ。
太めの油性マジックで鉛筆の線をなぞっていく。

(゚、゚トソン「多分コピーして配るんだろうから、全部白黒で描かなきゃなー、っと」

言いながら、絵にペンだけで影なんかを付けていく。
これがなかなか難しく、普段の落書きではこういう面倒なことは曖昧にぼかして描いているため、この絵も同じように誤魔化して描いていく。

(゚、゚トソン「っよし。これで完成でいいかなー」

鉛筆の線を消した際に出た消しカスを払ってから、出来上がった絵を両手で持ち、遠くからしげしげと眺めて見てみる。
なかなかどうして、悪くない。
乗らない気分で描いた絵にしては、上手く仕上がっているほうだと思えた。

(゚、゚*トソン「ふむ……。あ、そだ。せっかくだし、ピクシブに上げよ」

上手く描けたと思った絵をピクシブにアップするのは、もはや私の習慣になっていた。
そしてまたいつもの通り、ツイッターにて自分が上げた絵を宣伝する。
それに反応してくれるフォロワーを見て、私はいつもと変わらぬルーティンワークに、安心感を覚えていた……。

74 :(゚、゚トソン 点数、名声、私の絵 のようです :2013/09/28(土) 00:41:44 ID:BPMSsqjE0
(゚、゚トソン「あの……長岡君、これ……」
  _
( ゚∀゚)「ん?おー!チラシのイラスト?もう描いてきてくれたの!?」

次の日のお昼休み、友達のところで弁当を食おうと席を立った彼を、私は控え目に呼び止めた。
わざわざ放課後を選ばなかったのは、早く自分の描いた、内心ちょっと自信のある絵を見てもらいたかった故の、無意識のうちの行動だったのかもしれない。
そうして、すっかり誉め言葉を受け取る準備をしていた私は、絵を見て発する彼のくぐもった声に、面食らってしまったのだった。

(゚、゚トソン「?あ……、あの?どうかしました?」
  _
( ゚∀゚)「ん~……。いや、いいんだけどさ。なんか、こう……、もちっとリアルさが欲しいというか……」

(゚、゚トソン「?え……」
  _
( ゚∀゚)「例えば……そうだな、こんな感じで」

言いながら彼は、自分の机の中から適当なプリントを引っ張り出し、そのプリントの裏に油性マジックでサラサラと絵を描き始めた。

(゚、゚;トソン「…………ッッ!」

彼が5分ちょっとで描き上げたのは、私の絵などちっぽけな物に思えるくらい、瞳孔は開ききり、皮はブクブクと腐って爛れてウジが湧いた、できれば直視したくないほど気持ち悪いリアルなゾンビの顔面だった。
  _
( ゚∀゚)「こんな感じで、もっと恐怖感を煽ってくるようなイラストがいいかなって、思うんだよねー」

(゚、゚;トソン「……そ……そうです……ね」
  _
( ^∀^)「ここまで描いてもらって悪いんだけどさ。もう一回、そんな感じで描いてみてくれないかな?」


私は反論することも忘れて、返されたA4のコピー用紙を落としてしまわないよう、必死に指に力を込めながら、「わかりました…」と頷くしかなかった。

75 :(゚、゚トソン 点数、名声、私の絵 のようです :2013/09/28(土) 00:43:26 ID:BPMSsqjE0
午後の授業が終わった。
私は家に帰ってきた。
自室のベッドにゆっくりと座り込んで、茫然とする。
目は足元を見ているが、視覚的情報などこれっぽっちも頭に入ってこなかった。

( 、 トソン(……何が、『画伯』よ……)

あれは適当に書き上げたヤツだ、とか。
本気で描けばもうちょっと上手く描けるし、とか、そういう次元の話じゃない。
私が何時間もかけて完成させた絵と、長岡ジョルジュが5分で書き上げた絵。どう見ても画力の差は歴然だった。

( 、 トソン(……何で私、絵を描いてきたんだろう……)

ツイッターの仲間から、上手いね、って褒めてもらいたい。
その仲間から絵の評価の点数を付けてもらいたい。
いつの間にか、そんなことばかりを求めるようになっていて、絵を描くこと自体への楽しさなんてものは感じなくなっていたのではないか。


私は思い付いて、この前の数学の時間の落書きをアップした絵のリンクにアクセスしてみた。
評価回数は13、総合点に130の数字が付いていた。

( 、 #トソン「……ッ~~~!」

こんな数字が、なんだっていうのだ。
こんなのどうせ、全部仲間内から贔屓目に貰った、見たよ!っていう、ただの足跡にすぎないっていうのにっ……!

私はピクシブに上げていた、数十枚ある全ての絵を削除した。
多分、数時間後にはフォロワーの誰かが、私のこの行為に疑問を持って心配した声をかけてくれるんだろうが、そんなことはどうでもいい。
今はただ、何のために絵を描くのか分からなくなった自分が、どうすれば長岡ジョルジュの、クラスのみんなの期待に答えられるのか。
どうしよう、どうしよう、そればかりを、考えていた。


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